漬けものや野菜、果物など地域食材を活用!挑戦し続ける長野・伊那発「イナデイズブルーイング」
長野県伊那市の、アルプスの山々を望む伊那谷にできた小さなブルワリーの名は、In a daze Brewing(イナデイズブルーイング)。代表の冨成和枝さんは信州大学で乳酸菌の研究をしていた。出身地の愛知県岡崎から伊那へ移住し、定住の道を選んだ。ビール造りを通して農業や林業とつながりながら、よりよい暮らしを模索している。 【写真5枚】木曽の伝統的漬けもの「すんき漬け」がビールの原料に。長野・伊那発「イナデイズブルーイング」を写真で見る
廃棄される野菜の活路を探して
中央アルプスと南アルプスを見渡す伊那谷。冨成和枝さんは信州大学の学生時代を、ここ伊那で過ごした。自然、生命、農産物、それらへの興味が強かった冨成さんは農学部に進学。生命の真理を求めてニワトリの細胞を研究していた。 しかし、その後に進んだ大学院での研究テーマは乳酸菌。学部と院で研究テーマをガラリと変えるのは異例だが、「食品メーカーで働きたい」と、卒業後を考えての選択。発酵食品は大好きだった。 希望の食品メーカーに就職後、目の当たりにしたのが、大量に廃棄される規格外の野菜だった。それの有効活用は生産者が抱える課題解決の一助になる。冨成さんは規格外の野菜を利用した調味料の開発に取り組んだ。 乳酸菌の知識を活かすとき……しかし現実のビジネスの世界はそう簡単には進まなかった。廃棄される野菜は山とあったが、それを定期的に商品化することの難しさに直面した。 就職後に冨成さんが出会ったもうひとつがクラフトビールだ。2012年、まだクラフトビールという名は知られていない時代だが、地産の大麦や小麦、米などの農産物を意識的に取り入れているブルワリーはいくつかあった。 規格外の農産物も利用できるかもしれない……。大きな食品メーカーでは難しくても小さなブルワリーならできるのではないか。農業とビール造りが頭の中でつながった。 特に冨成さんが好きなのはベルギービール、中でも「ランビック」と呼ばれる酸っぱいビールだ。初めて飲む人はきっと驚くに違いない。とてもビールとは思えない、といってワインとも明らかに違う酸味と深い味わい。乳酸菌が働いている。こんなビールが造れたら……。農業と乳酸菌とビール造りが頭の中でつながった。