「ふざけんなよと」怒り爆発 大手外食が“露骨に冷遇”されるワケ
「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよと」 先週、サイゼリヤの堀埜一成社長が決算会見の場でキレたことが大きな話題になった。緊急事態宣言によって、午後8時までの時短営業が要請されて経営がかなり苦しいところ、西村康稔経済再生担当相が、「昼間も不要不急の外出をお願いしたい」と口走ったことに、つい怒りが爆発してしまったのだ。 飲食店の倒産件数は? データを見る ただ、堀埜社長の気持ちは痛いほど分かる。休業補償は時短分しか出さないから午後8時までは自分たちでしっかり稼げよ、と冷たくつき放す一方で、同じ口で客に対しては「今は自粛だから店に行くなよ」と呼びかける。完全な「生殺し」状態だ。 しかも、東京都では1日6万円の感染拡大防止協力金は、中小企業や個人事業主に限定されている。サイゼリヤのWebサイトによると、東京都には212店あるが、それらはかなりシビアな企業努力を強いられているのだ。一部の閉店休業状態の飲食店オーナーが、「協力金バブル」「このお金で旅行します」などとうかれている話もある中で、「ふざけんな」の一言くらい出て当然の理不尽さと言えよう。 「大手外食はまだ余裕があるからだ」と思う人もいるだろうが、居酒屋チェーン大手のモンテローザが都内店舗の2割にあたる61店を年内に順次閉店をしていくと発表したように、大手は店舗が多いぶんダメージもかなり深いのだ。また、店舗が多いということは、それだけ働く人が多いということでもある。もし大手が潰れるようなことがあれば、それだけ失業者があふれて、堀埜社長が会見で述べたような「シャレにならないことが起こる」のは必至だ。
政治家への「心づけ」が不足
では、経済対策的な観点からも支援が必要なのは明白であるにもかかわらず、なぜ外食大手だけがこんなにも露骨に冷遇されているのだろうか。 いろいろなご意見があるだろうが、個人的には「与党への政治献金が少ない」ことが大きな影響を及ぼしていると考えている。身も蓋(ふた)もない話で恐縮だが、政治家への「心づけ」が足りなかったのだ。 なんてことを口走ってしまうと、「貴様! 国民が一致団結をしなくてはいけないこの非常事態に、くだらないデマを流すな!」と怒りでどうにかなってしまう自民党支持者の方もたくさんいらっしゃるだろう。ただ、ほんの2年前に、規制強化を恐れる鶏卵生産大手「アキタフーズ」の秋田善祺元代表が、吉川貴盛元農相に計500万円の賄賂を払ったことからも分かるように、一部の企業や業界団体が自分たちに有利な政策をしてもらえるように政府与党に「カネ」を配っている、というのはどんな理屈をこねても否定できない現実なのだ。 では、外食大手の皆さんはコロナ禍になる前から、その現実に向き合ってしっかりとロビイングをしていたのかというと、2020年11月27日に公表された政治資金収支報告書(2019年分)を見る限りでは、そうとは言い難い。 サイゼリヤも加盟している日本フードチェーン協会の政治団体「外食産業政治研究会」のこの年の寄付額はゼロ。その代わりに、与党を中心とした国会議員の政治団体に会費を支払っている。要するに、政治資金パーティーだ。その合計額はおよそ1100万円となっている。 というと、「何が政治資金が少ないだ、1000万円も使っているじゃないか!」と驚く方が多いかもしれない。確かに、一般的な消費者の感覚ではそうだが、業界団体のロビイングの世界ではそれほど高額ではない。上には上がいるのだ。 分かりやすいのが、中小企業・小規模事業者の業界団体として、「コロナによる影響が大きい飲食業、小売業、宿泊業などに対する集中支援」を訴え続けている日本商工会議所の政治団体「日本商工連盟」だ。