2017年「生理学・医学賞」は誰の手に? 日本科学未来館がノーベル賞予想
「操作」の重要性をイメージしていただけたでしょうか? では、神経細胞の操作技術であるオプトジェネティクスはどのようにして開発されたのでしょうか? まず、重要なのが「チャネルロドプシン」。ヘーゲマン博士が光合成をする微生物クラミドモナスから発見しました。チャネルロドプシンは「光を当てると形が変わる膜タンパク質」です。形が変わると陽イオン(H+、Na+、K+)が細胞内に流れこむようになります。
この性質を神経細胞に利用できるのではないかと思いついたのが、ダイセロス博士とボイデン博士です。神経細胞の内部はマイナス、外部はプラスの電気を帯びています。この状態が逆転すると神経細胞のスイッチがオンになります。そこで、チャネルロドプシンを神経細胞の細胞膜につくり、光を当てることで陽イオンを細胞内に流れ込ませ、人工的にスイッチをオンさせる方法を作り出したのです。
オプトジェネティクスという新しい実験技術を得て、脳科学は大いに進展しました。その成果の一例として、例えばマウスのやる気スイッチの場所の解明や、うつ状態のマウスに楽しかった記憶を人為的に呼び起こすことによるうつ状態の改善などが報告されています。 オプトジェネティクスは遺伝子操作が必要なので人間には適用できませんが、動物実験から病気の原因が明らかになれば、治療法の開発や改良、新薬の開発につながるかもしれません。 ◎予想=科学コミュニケーター・石田茉利奈/毛利亮子
10月2日午後6時30分から発表
2つの予想をご紹介しました。いかがでしたか?ノーベル賞を取りそうな気がしてきませんか? しかし、世の中には素晴らしい研究がまだまだあります。ノーベル賞をきっかけに、様々な研究に興味を持っていただけたらと思います。ノーベル生理学・医学賞は10月2日午後6時30分(日本時間)から発表されます。お楽しみに。
------------------------------------------ ◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 石田茉利奈(いしだ・まりな) 1990年、大阪府生まれ。京都大学大学院農学研究科を修了後、システムエンジニアを経て2015年より現職。すぐ生き物を飼う癖があり最近はプラナリア、粘菌、ボルボックスを飼育。