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THE BACK HORN菅波栄純、SNSを駆使する彼が語るコロナ禍以降のバンドのあり方

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音楽と人

これまでいろんなバンドと付き合ってきたが、その中でもトップクラスのクレージーなギタリストがこの男、THE BACK HORNの菅波栄純である。プレイヤーとして優れているのはもちろん、演奏時の表情は豊か。人として純粋かつ優しく、同時に脳内思考がキレッキレ。興味をそそられたことには必ず手を出し、現在、SNSやブログを7つほど同時進行&日々更新。デジタル関連にも非常に詳しい。今回彼に話を聞きたかったのは、コロナ禍以降のバンドのあり方、についてである。

   ライヴハウスが3密になりやすいと名指しされ、ほとんどがいまだ自粛中。自粛をやめても今まで通りに、ライヴができるか誰もわからず、会場、ミュージシャン、もちろんファンも、不安と戸惑いを隠せない。これが答えではないし、やり方なんて人の数だけあるが、彼のネットやSNSとの繋がり方には、コロナ以降の音楽へのヒントが、いくつも隠れているように思えた。 ※『音楽と人』7月号に掲載された記事です。

現状を維持したいわけでもないし、別に河原に住んでもいいとすら思ってる

   ――近況をまず教えてください。 「バックホーンは、自分たちの都合(註:ヴォーカル、山田将司の声帯ポリープ切除の手術)で年明けからツアーを延期して、何も活動しない引きこもり期間がずっと続いてたんですよ。そこに緊急事態宣言がやってきたから、年明けから半年近く、ずーっと自粛してた感じです」 ――長いですね。 「そうなのよ。で、俺が最近コロナに対して思うことはね、あれは生き物なのか何なのか、って気にならないですか? もし生き物だと認識したら、態度が変わりません?」 ――もうちょっと具体的に(笑)。 「コロナがもし生き物だったら、ヤツらは生き延びようと必死で人に感染させてるわけじゃないですか。お母さんウイルスとか子供ウイルスもいるかもしれない。そうなると、責めるだけなのもどうなのかな、とか」 ――あははははは! 「生き物擁護派なんで(笑)。それにこの先、ヤツらと共存せざるを得ないわけじゃないですか。人間が制圧できないものと共存するんだから、今だけをやり過ごすのは無理だと思うんですよ。何か突破口がないか、いろいろ試して探して変わらないと、この先、かなり厳しいと思う」 ――ここ最近、YouTubeにTwitter、はてなブログにnoteにInstagramと、狂ったように投稿している理由がなんとなくわかりました(笑)。 「ていうか、変えてかなきゃいけないよって、ずっと言われ続けてきたと思うのよ。特にこの音楽業界は。2000年代に入って、バブルが終わったんだからいい加減考え方変えなさい、って。自分もバンドも事務所もいろいろ試してたけど、もっと速いスピードで変えていかないと間に合わなくなるよって」 ――それがこういう状況になって。 「加速せざるを得なくなってる。特にこの新型コロナで、この先ライヴのやり方考え直してください、って言われてるようなもんですからね」 ――でもそれできる? 特にバックホーンみたいなバンドが。 「いやぁ、できないっすよ、すぐには。これ、俺が思うのは、お客さんがいっぱい入ったライヴハウスで演奏する、という、これまで育んできた文化に問題があるわけじゃなくてさ。多岐にわたらないといけないよ、ってことだと思うんですよ。要は、ひとつの収益源をそこに求めてるから、こういうことになった時、どうしようって大慌て、って話じゃないですか」 ――そうですけど、今年いっぱいライヴはできないかもしれないし、今後もライヴハウスでキャパのギリギリまでお客さん入れるなんて、厳しいかもしれない、じゃあライヴの違う見せ方を考えて、キャパの半分以下でスカスカの客席を前にライヴをやるとか、基本着席とか、現実的にできる? 「ありだと思いますね。自分はライヴが好きだし、ライヴハウスが好きだし、あの熱狂の中で育って、あの一瞬を誰よりも愛してる自信はありますよ? でも、無観客の配信のみでライヴをやる日があってもいいし、キャパの半分だけお客さん入れて、ライヴをやる日があってもいいと思う。そのやり方がバラエティに富んでいけばいいんじゃないですか」 ――それでモチベーションはキープできる? 「人によるでしょうけど、俺は大丈夫ですね。ミュージシャンとして究極のことを言ったら、音楽やりたくて生きてるだけなので(笑)。最悪、音楽が仕事として成立しないくらい壊滅的な状況になっても、河原に住んで曲作ってるだろうし(笑)」 ――あはははは。 「現状をキープしなきゃいけないって感覚が、俺にはあんまりないんだよね」 ――いろんなことをやってみればいいじゃないかと。 「うん。思いつくかぎりのことをやってみるべきだと思います。ただ自分、ご存知の通り、生まれてこの方ずっとネガティヴなんですよ(笑)。早死の家系だし、あんまり長生きする気もしていない。かといって死にたいわけでもなく、現状を維持したいわけでもないし、別に河原に住んでもいいとすら思ってる。そんな俺が、なんでここに自分を留めているかって、思いついたらそれをやらないと気が済まない性格だからですよ。あれ試したらどういうふうに変わるのかなって、その結論を知らないと死ねない。そういうのが頭に出てきちゃったら、それを試さない限り死ねない。だから長生きしそうな気がするけど(笑)」 ――さすが昔、ギターとどこまで一体になれるか確認しようと、全裸にギターで街を走り回った男なだけはある(笑)。 「そういうことなのよ(笑)。やってみないと終われない。何のポジティヴさもないのにめちゃめちゃタフなのは、そこに理由があるんですよ。だからどんどん発信する」 ――その発信について聞きます。2、3年前かな、すさまじい数のSNSで発信を始めたけど、気づいたら全然更新しなくなっていて。そしたらコロナ以降、ほぼ毎日のように動画とYouTube上げまくるようになってて。 「自粛してたんですよ。自分らの理由でライヴができない、そんな状態で、能天気にブログや動画上げるのは違うな、と思ったんで。でもずっと準備はしてたんです。それを本来は徐々に出してくつもりだったけど、このコロナ禍で、みんなステイホーム状態になっちゃったから、それなら暇つぶしにもなるだろうから、いっぺんに出しちゃえ!と思って。でも昔からいろいろ試してたから、YouTubeのアカウント自体には、6年前から投稿は始めてたんですよ」 ――あ、そうなの? 「1ヵ月くらい前に〈すがちゃんねるYOU〉ってチャンネル名変えたんだけど、よくよく動画をチェックしてみると、1ヵ月なのに数百本動画が上がってんの(笑)」 ――(YouTubeをチェック)あ、ほんとだ(笑)。 「これ、もうサービス終了したGoogle+をやってた頃、そこの動画はいったんYouTubeに上げてたんですよ。だからその頃から動画は作っていて。好きだったの。マネージャーに『動画はこれから来るからな』って偉そうに講釈垂れてたくらい(笑)。当時は動画で上げると、通信制限かかるから見れないとか言われて、めっちゃ評判悪かったんですよ」 ――だからほとんどが1分以内で終わってんだ? 「そうそう。短いんですよ。Vineが流行ってた時は6秒くらいで十分、みたいに言われてたし。でももう今は、ツイッターでも2分20秒くらい投稿できるし、インスタのIGTVなら1時間くらい大丈夫。なのでもう動画どうぞっていうか、長くてもいいよ、みたいな空気は漂ってるじゃないですか」 ――もうほぼそうですからね。 「で、YouTubeはなんとなく15分っていうフォーマットがあるんですよ。15分以上にするには申請が必要になんの。それなのに俺〈すがちゃんねるYOU〉作って最初に投稿したのは、20分間何もしないと心が休まる、っていう超ロング動画で(笑)。20分間、ただ俺が定点カメラ置いて、俺も何もしないんでみんなも何もしないで過ごしてください、って動画(笑)」 ――今4、5秒でどれだけ伝えるかっていうのがどれもマストじゃないですか。楽曲はイントロ短め、すぐヴォーカルから入るのが求められるし、SNSも、引きのある際どい表現使って、どうにかしてリンクを開かせようとしてて。 「俺もそう思ってたんですよ。短くバシッと見せてくれって、みんな思ってるんじゃないかなって。でも長い動画も作るようになって考えが変わったのは、見る人によってはそうでもねぇなって。ギュッと凝縮された刺激を求めてる人もいるけど、普通だったら投稿しないような、何でもないものがけっこう人気になったりする。この世界に何十億人も存在している中で、自分が先入観で〈こういうのが好きなんでしょ〉ってイメージすることって、ものすごく小さな世界しか見てないんだよね」 ――動画はこうだ、って先入観ね。 「もちろんひとつの正解ではあるけど、全然そうではない人がつねにいんの。自分の周りの友達が『その動画つまんねえよ』って言っても、世界のどこかの人にとってはチョー面白い動画かもしんなくて。出してみないとわかんない」

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