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【論説】国家の恥「ブレグジット」 政治家は国益を優先せよ

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The Guardian

【ガーディアン論説委員】  保守党の内紛が英国の欧州連合(EU)離脱につながったのは、国家の恥だ。その内紛は今なお続いている。分断は今や、英国はEUと新たな協力体制を築き結びつきを維持すべきだと考える陣営と、きっぱり決裂すべきだと考える陣営との対立にまで広がっている。  後者が自身のイデオロギーに固執するさまに驚いた人も多いかもしれない。一般的に保守党は、独断的な意見を信用しない懐疑主義的政党だとみなされているが、これまでもイデオロギーによる分断を繰り返してきた。  テリーザ・メイ英首相は自身がまとめたブレグジット協定案で、両陣営をまとめようと試みた。だが、自らの党の議員を説得することができず、両陣営から抵抗され、3度も採決に失敗した。保守党議員の多くは、国民投票は賢明な協議や分別ある議論を通して改善すべき過ちだとは思っておらず、正気を失ったかのように振舞っている。正気を失った議員らは、ブレグジットに対し諸外国から際限なく協力を得られると思っているようだ。  彼らは英国のために諸外国が、こぞって貿易上の優遇措置を提案し、市場を開放し、国内産業を犠牲にすると思っている。保守党の議員らはこのおとぎ話のような前提に基づき、伝説上の生き物であるユニコーンを探し求めているようなものだ。ユニコーンを捕まえたと考える議員さえ出てきている。  より穏健な形のブレグジットを採択することで排除しようとしたのは、この妄想だった。1日の採決は、合意なき離脱が現実的なものになり始めたことを受け、再国民投票を行う必要があるのか、EU加盟国の離脱について定めるリスボン条約第50条を無効にするのかを議会に問うのが目的だった。この結果、EUとの恒久的な関税同盟にとどまる案は3票の僅差で、再国民投票の実施案は12票差でそれぞれ否決された。  何らかの合意の形成が求められていることは明白だ。メイ氏は自身が決めた、越えてはならない一線と強硬論者により窮地に立たされている。より穏健なブレグジットだと、不信任決議を突き付けられる危険がある。一方、より穏健なブレグジットでなければ、合意なき離脱の阻止に投票した議員の多くから同じような脅威を突き付けられるだろう。  メイ氏は自身の利益を守るため、早期選挙の実施という誘惑に駆られるかもしれない。だが、国と政党を同一視したこの案は間違っている。選挙によってブレグジット問題の解決をメイ氏に求める人々は、EU離脱は国民に自らの経済的利益に反対票を投じさせる方法だと考えている。これは保守党勝利の前提条件になっている。保守党議員の約10人に7人が離脱に投票した選挙区を代表している。さらに労働党議員の約10人に6人も離脱に投票した選挙区の代表だ。  離脱に投票した有権者の一部、特に貧困地区の左寄りの有権者は、とりわけ離脱で不利益を被るだろう。それでも、離脱派有権者の離脱への意欲は熱狂的に高まり、内省的なナショナリズムをもたらした。文化の衝突が階級闘争に勝った。  ハードブレグジット(強硬離脱)派は、この状況とEU離脱がサッチャリズムを驚異的な勢いで復活させるという考えを巧みに利用している。これは、ポピュリズムと欧州への敵意というベールで覆われている経済において、供給側に衝撃を与えるだろう。だからこそ彼らは、現状維持にならないようメイ氏に行動してもらいたいと思っている。  閣僚の大部分は、国益よりも自らの野望を優先することを気にもしていない。今日の保守党の軽薄な偏狭さと偏った利害を追求するさまには全く驚くばかりだ。議論の論調を見ていると、保守党の指導部が自己陶酔していることは隠しようがない。はたから見ると、その自己本位で無責任な態度は見苦しい。  だからこそ、政治家は団結すべきなのだ。2016年の国民投票を意義あるものにしなければならない。ブレグジットにより生じる問題に対処する革新的な政策と、EU離脱による不利益への対処計画が求められる。離脱協定の民主主義的正当性を明確に示すことも必要だ。  だが、ブレグジットは今、自らの党派と価値観を表明する手段に成り下がっている。政府が問題解決できないことで最も損害を受けるのは、夢想家やイデオロギー信奉者の思い付きに振り回され、見捨てられる人々だ。【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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