闇バイト「歩くことと同じくらい簡単に始められた」…「受け子」で逮捕・起訴の20歳男
若者が「闇バイト」に応募し、逮捕される事件が後を絶たない。特殊詐欺事件の「受け子」をしたとして逮捕、起訴された東京都足立区の男(20)は、SNSで簡単に応募できる闇バイトを「歩くことと同じくらい簡単に始められた」と振り返り、「でもやらなければよかった。被害者の方に申し訳ない」と反省の言葉を口にした。
男は今月、神奈川県内の警察署の接見室で2回、読売新聞の取材に応じた。男の話や裁判記録などによると、男はアルバイトを辞めて金に困っていた今年8月、SNSで「闇バイト」などと検索し、「債権回収の仕事」を紹介された。秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で横浜市内の80歳代の女性宅を訪れるよう指示を受け、女性からキャッシュカードを渡された。「債権回収じゃなく、良くない仕事だ」と感じたが、すでに別の「案件」で報酬14万円をもらい、「後戻りできない」と受け取った。
男はだまし取ったキャッシュカードを使い、横浜市内のコンビニ店の現金自動預け払い機(ATM)などから計154万円を引き出し、指示された同市のパチンコ店の個室トイレ内に145万円を隠したという。その後、JR大船駅で待機するよう指示され、そこで警察官の職務質問を受け、キャッシュカードが見つかり事件が発覚した。
3人兄弟の長男として育った。家は自転車も買ってもらえないほど貧しかった。高2の時に付き合っていた女性の妊娠がわかり、高校を中退。土木系のアルバイトを始め、1日12時間働いたが、時給は1000円ほど。遊ぶ金ほしさに闇バイトに手を出した。
逮捕されたのは今回が2回目だ。最初の闇バイトは2021年頃、東京都内で金融機関の口座に金を移す資金洗浄にかかわり、報酬3万円を得た。「こんな短時間で簡単に金が手に入るんだ」。警視庁に逮捕され、少年院に入った。再犯すれば罪は重くなるとわかっていた。それでも、闇バイトはSNSで簡単に検索でき、「また軽い気持ちでやってしまった」と悔やむ。
初公判で起訴事実を認めた男は「被害者に申し訳ないと思います。もうこんなダサいことはしたくないです」と語る。どうすれば踏みとどまれたと思うか。少し考え込み、男はこう答えた。「自分にも親身になって相談に乗ってくれる人がいる。そういう人に忠告されていれば、踏みとどまれたかもしれない」