トヨタがMIRAIを販売することの意味
MIRAIにかける思いは海よりも深い
トヨタが第二世代の水素燃料電池車(FCV)「MIRAI」を発表した。菅首相や東京都知事が「脱ガソリン車構想」を打ち出したことで、日本の自動車産業に激震が走っているが、クリーンなイメージがある水素エネルギーが注目されている。ここでは難しいエネルギーの話しはさておいて、トヨタの新型MIRAIのインプレッションをレポートする。(モータージャーナリスト=清水 和夫)
5分充電、約800キロをCO2実質ゼロで走行
トヨタがMIRAIにかける思いは海よりも深い。なぜなら、将来の自動車の動力にとって欠かせないポテンシャルを持っているからだ。トヨタは小さいクルマ(2トンくらい)まではバッテリーEV、それよりも大きいトラックやバスはFCVが相応しいと考えている。 エネルギーの密度ではバッテリーよりも水素で電気を作って走ったほうが軽くて済むし、充填時間はガソリン車並みに短い。 ということで、量産型FCVは2014年に初代MIRAIとして市販されたが、その後、燃料電池システムの開発を熱心に取り組み、水素から電気を発電するスタックが大幅に進化している。パワーアップしたけど、よりスタックの大きさが小さくなったのだ。 つまりMIRAIならエネルギーの充填に5分我慢すると、CO2を一切排出しないで約800Kmも走れるのである。これはバッテリーEVには絶対できないことなのだ。
走れば走るほど空気をきれいに
ボディはレクサスLSのプラットフォームを使うが、ホイールベースは短くなっているので、LSよりも少し短い。しかも、駆動方式はFR(リヤ駆動)なので、高級車として使えるというのが最大の特徴だ。 初代MIRAIは後席は狭かったという反省があった。ということで、新型MIRAIなら会社の社長さん、お役所のおエライさんが後席で快適にくつろげるはずだ。
しかし、後席の乗員以上に喜ぶのはハンドルを握るドライバーだ。エンジン車よりも重心が低くて走行性能は安定している。 しかし、フロントに大きなエンジンがないので、ハンドル操作に俊敏に反応するから、運転がとても楽しくなる。さらに、振動するエンジンがないから、まるで清流を流れる木の葉のようなしなやかでスムーズな動きなのだ。 違和感があるのはエンジンの音がないということだが、バッテリーEVに慣れた人なら問題ない。音が欲しい人には合成的に音を作りだしている。 バッテリーEVと違って、FCVは空気を吸って走るので、走れば走るほど大気をキレイにする「マイナスエミッション」という新しい機能が加わる。 FCVはゼロエミッションの電動車であるから、バッテリーEVの仲間であると言えるので、是非FCVを試乗してみてほしい。