旭川市で豪雨被害 出荷間近…花に濁流 「蝦夷梅雨」の様相
停滞する前線による大雨で29日早朝、北海道旭川市を流れる一級河川・ペーパン川で越水が発生した。濁流が水田に入り、出荷を控えた花きのビニールハウスも浸水した。 堤防が崩れ濁流が河川に戻っている画像 道によると同市東旭川町米原の水田地帯で河川があふれた。地上部と河川の高低差がほぼない場所だという。 農家の柏木則行さん(66)は「“ドーン″という音が聞こえたと思ったら濁流が来ていた」と振り返る。 柏木さんは18ヘクタールで米と、50メートルほどのハウス約10棟でスターチスを生産する。午前6時前に119番通報し、家族で避難した。花きの出荷を1週間後に控えていたが、全てのハウスが濁流に漬かり、水田の一部も水が流入した。 柏木さんは避難所にいてまだ現地を確認できていないが「花だけで被害額は軽く500万円はいくかもしれない。浸水した2ヘクタールほどの水田は苗がつぶれている可能性もある」と不安をこぼした。 旭川地方気象台によると、停滞する前線の影響で28日から降水が続いた。越水が起きた場所付近の29日午後1時までの24時間降水量は85ミリ。市などによると住宅2軒が床上浸水し、避難者もいる。
梅雨のない北海道で…
梅雨のない北海道で29日、6月の観測史上最高値を上回る降水量を各地で観測した。 気象予報士の森山知洋さんは、蝦夷(えぞ)梅雨と呼ばれる状況と指摘する。異例の早さとなった各地の梅雨明けと蝦夷梅雨は関連しているという。 森山さんによると、蝦夷梅雨は①太平洋高気圧が強く張り出したため梅雨前線が押し上げられる場合②オホーツク高気圧の冷たく湿った空気が流れ込む場合──の2種類ある。 例年、梅雨前線は本州付近に停滞する。だが今年は、太平洋高気圧に押し上げられるように梅雨前線が北上、北海道で梅雨のような天候が続いた。森山さんは「畑の状態が悪化し、農機が入れない所がある。ぬかるみや転倒の恐れもある」と農作業事故への注意が必要と指摘する。 北海道では30日以降、梅雨前線の活動が弱まり蒸し暑さは続くが、天候が回復するとみられる。東北北部では30日以降、梅雨前線が南下して雨になると予報する。森山さんは「梅雨前線は天候の移り変わりが激しい特徴がある。“戻り梅雨”に注意し、最新情報の確認を」と農作物や水の管理を呼びかける。
日本農業新聞