「あなたに一番似合わない色は黒です」平凡な専業主婦が44歳で自分を突き動かす信念に出会うまで
「働いてみたら?」夫からの思わぬ一言。長年の趣味からチャンスを掴む
「君は専業主婦に向いていないね。働いてみたら?」 峰子さんは40歳の時、夫から唐突に告げられたといいます。結婚当時は『仕事をしないでほしい宣言』をしていた夫が、なぜそんなことを言い始めたのか? 「今思えば、私が出かけずにずっと家にいる時、ものすごく不機嫌な顔をしていたんでしょうね。表に出していた自覚は全くなかったのですが、夫から『奥さんが家の中で楽しそうにしていないと、家の空気が悪くなる』って何度か言われましたから」 「働いていい」は、峰子さんが待ち望んでいた言葉でした。一方で「今更? ブランクがある上に人脈も資格もない。こんなローカルで小さな町ではほとんど求人もない。40代からどうやって仕事を?」と、怒りにも似た気持ちもありました。 そんな時、峰子さんは雑誌で興味深い記事を目にします。知人が経営するエステサロンが、日本ではじめてデパートに出店を果たしたというのです。当時はまだエステサロンがメジャーではない時代。峰子さんは「すごい快挙!」と興奮したそう。さらに驚いたことに、フランス料理教室のパーティーで、その知人と再会することになったのです。 「記事の話をしたら会話が弾んで、私が読んでいる雑誌の話になって。月8冊くらいの女性誌を15年以上読み続けていると話したら『ぜひやってほしい仕事があるの。エステサロンでカラーアナリストとして働いてみない?』と誘われたんです」 カラーアナリストの講座を受けるには、2週間近く家を空けることになります。峰子さんは35歳の時に長男を産んでいましたが、まだ小学校低学年です。「家を長期間留守にするなんて現実的な話ではないわね」と思いながら夫に話した峰子さん。すると、夫から「行ってみれば?」と予想外の一言が。 「絶対に許さないと思っていたのでびっくりですよ。『子どもはどうするの?』と言ったら『実家に預けよう』と。受講料や交通費、宿泊費は全て払うと言うんです。当時は不思議だったけれど、今思えば、夫は今まで自由に趣味を謳歌してきたから、その後ろめたさが今更押し寄せてきたんでしょうね」 当時パーソナルカラー診断はまだアメリカから入ってきたばかり、知らない人の方が多い時代でした。 「私も雑誌でたまに見かける程度です。正直、カラーアナリストとして働く魅力もやりがいも想像できなくて。でもそこまで夫が後押ししてくれるなら、どんなものか受けてみようと思ったんです」