「あなたに一番似合わない色は黒です」平凡な専業主婦が44歳で自分を突き動かす信念に出会うまで
繰り返しの中で思う「妻や母として生きて終わるのかしら」
あまりの多忙さに心身ともにやられてしまった峰子さんは、子どもを連れて家出までして夫を説得。結果的に同居解消を勝ち取ります。3人暮らしになって1年、峰子さんは大勢の目を気にせず家事ができる気楽さを感じ、気持ちよくこなしていました。しかし、そんな新鮮な気持ちも長くは続きませんでした。 「大黒柱の夫もかわいい子どももいて、衣食住に何一つ困らない。マイペースに家事ができる。空いた時間に友達と会える。大好きな本や雑誌も楽しめる。今思えば幸せな状況よね。でも、当時はそう思えなかったの」 子どもは自分の手を離れて成長していくのに、自分は止まったまま同じことを繰り返しているだけ。明日も同じことをするなら別に今日頑張らなくてもと、どんどん家事がズボラになっていったそうです。 「夫も子どもも大切です。でも、このままずっと『峰子』という個人はないままなのかしらと、時々だけれど思うことがあって。大きな怒りや焦りではなく、なんとなく無気力で鬱々とするような、自分の中のエネルギーが小さくなっていくようでした」 そのせいか否か、極度の低血圧症になってしまい、ひどい倦怠感やめまいに襲われるように。「このままだと体の中から腐ってダメになる」と思い、学生時代の親友と習い事を始めたといいます。 「エレクトーン、テニス、語学レッスン…内ではなく外へ意識を向けなきゃと、少しでも気が向いたら体験してみることにしました。瞬間的に楽しいだけの、ほんの息抜きでしたけどね。ただ、出かけた後2日くらいは、家で余計なことを考えずにいられました」 唯一長く続いたのは、フランス料理教室だったそう。「パリのル・コルドン・ブルーで学ばれた先生で、流行の最先端をいく方だったんです。カラーを使った色彩感覚あふれる料理とテーブルコーディネートが、本当に素晴らしくて」と、峰子さんは瞳を輝かせます。 実は、この料理教室と愛読していた雑誌が、峰子さんを大きな転機へと繋ぐのです。