スペースX、ISSへの民間人宇宙飛行を2回分契約–米ヴァストスペースが予約
米カリフォルニアを拠点とするVast Spaceは米国時間12月19日、Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)による2回の「民間宇宙飛行士ミッション」(Private Astronaut Missions:PAMs)を契約したと発表した。 PAMsは民間人が国際宇宙ステーション(ISS)を利用する機会を拡大することが目的で、米航空宇宙局(NASA)が管理している。NASAはこれまでに合計4回のPAM飛行を許可しており、いずれも米Axiom Spaceが提案し、実際に民間人をISSに搭乗させている。 AxiomによるPAM飛行「Axiom Mission(Ax)」では、ハードウェアパートナーをSpaceXが務め、「Falcon 9」(ファルコンナイン)ロケットで打ち上げられた宇宙船「Crew Dragon」がISSに送迎している(AxiomによるPAMの第4弾「Axiom Mission 4(Ax-4)」は来春に予定されている)。 VastのPAM飛行もSpaceXが支援する。SpaceXはNASAからの許可が下りるなどの準備が整い次第、打ち上げを担当する。 「ISSへのペイロードおよび有人ミッションを可能にすることは、Vastの戦略における重要な部分であり、NASAや世界の宇宙機関との協力をさらに進展させるものだ」と、Vastで最高経営者(CEO)を務めるMax Haot氏は述べている。 SpaceXにPAM飛行を予約したVastは、Falcon 9で打ち上げ可能という宇宙ステーション「Haven-1」の開発を進めている。Haven-1は円筒形状の宇宙ステーションで、回転によって人工重力を発生させる点が特徴となる。これにより、長期間の宇宙滞在の際に発生する、宇宙飛行士の骨密度や筋力の低下を防ごうとしている。Haven-1は2025年8月以降の打ち上げが予定されている。 Haven-1を開発しているVastは、Haven-1の後継として「Haven-2」を2024年10月に発表した。Haven-2は、モジュール式に開発され、ISSと同様に地球低軌道(LEO)で段階的に構築できるという。 現在のISSは、2030年で運用が終了することが予定されており、NASAはISSの後継となる民間宇宙ステーションを開発する「商用地球低軌道開発計画」(Commercial Low earth orbit Development:CLD)を進めている。 CLDのパートナーとして、AxiomやBlue Origin、Starlab Spaceが選ばれている。CLDでは、2026年半ばにも2回目の選考が予定されており、NASAは1社以上を選ぶとされている。 Vastは2025年に打ち上げる予定のHaven-1を建設、運用することで同社の実力を実証することを目指す。Vastは、Haven-1でNASAから認定された後で「Haven-1を進化させた」というHaven-2の最初のモジュールを2028年までに軌道上で完全に運用する計画としている。 海外メディアのSpace.comは、VastがPAM飛行するのは、CLDの2回目の選考でVastがHaven-2の設計を競う準備をする上で重要なステップになると指摘している。
塚本直樹