サイン盗みアストロズにもうひとつの疑惑…ボールの回転数をアップさせる何かの不正をやっていた?
「俺は、真っ直ぐを高めに投げて、同じ高さからカーブを投げたかった。ピッチトンネルの理論だ。しかし捕手は『低めに投げろ、低めに投げろ』という。何度説明してもわかってくれない。どうしても溝は埋まらなかった」 4シームを高めに投げて、同じ高さからカーブを曲げる、というのは今の大リーグのトレンドの一つだが、結果としてバウアーは、人の話を聞かない悪いチームメートだ、というレッテルを貼られた。そうしてチーム内で孤立した。 あのとき、大学時代のエピソードを引っ張り出してきて、バウアーが仲の悪いコールの活躍に嫉妬して、松ヤニの使用を暴露した――というのは、確かに話として成立しやすい。だが実際のところ、二人の間に個人的な確執があったわけではない。 仮に対象がコールだったとしよう。あるいは、アストロズの投手陣に向けられたものだとしよう。しかし、松ヤニ程度で、あいつはズルをしているんじゃないか、と騒ぐ選手はいない。多くの投手が使っていることは、周知の事実。暗黙の了解である。 ただもしも、松ヤニ以上に強力な粘着性の物質を使っているとしたら? これは、サイン盗みの話と通じるところがある。 1898年の話だが、フィリーズはセンターのクラブハウスからコーチボックスまでワイヤーを地中に埋め、双眼鏡などで盗んだサインをベースコーチに電気信号で伝えていた。 そのワイヤーに相手選手のスパイクが引っかかって発覚するのだが、その際、電子機器を使ったことは糾弾されたが、サインを盗むという行為自体は、さほど問題にならなかった。なぜなら、どのチームもやっていたから――。 以来、例えば、投手の癖をコーチなどが盗み、打者に伝えることには目をつぶるが、電子機器はだめだ、という線引きが生まれたという。その基準に照らし合わせれば、アストロズは今回、センターからのライブ映像を使っていたと報じられているので “一線を越えた”ということになる。