ウマ娘のサイバー藤田社長が矢作師と挑む世界一、まずはシンエンペラーでジャパンカップ制覇
これだけでもすごいことなのに、この2人による「驚くべきキャンペーン」はもうひとつあった。昨年末に中山競馬場で行われたホープフルステークス2着のシンエンペラーが今年の皐月賞で5着、日本ダービー3着の成績を残すと、その後は欧州遠征。9月にアイルランドのチャンピオンステークス3着を経て、10月の凱旋門賞へチャレンジしたのだ。 結果は道悪の影響もあり12着だった。それでも全兄に4年前の凱旋門賞を勝ったソットサスがいる血統背景から、地元フランスでも大いに注目を浴びた。
実際、凱旋門賞を勝つことは、いまや日本競馬の悲願になっている。かくいう筆者もドウデュース、タイトルホルダー、ディープボンド、ステイフーリッシュという4頭の布陣で挑んだ2022年、歴史の目撃者にならんと勇んで現地に足を運んだが、直前の豪雨で惨劇を観る羽目になった。 ■凱旋門賞とBCクラシック制覇に挑んだ2024年 そのとき、個人的に凱旋門賞を勝つにはどんな馬場も平気でこなす怪物の出現を待つしかないと半ば絶望的な気持ちになったものだが、伏兵ステイフーリッシュで挑んだ矢作調教師は「必ずまたチャレンジします」と雪辱を誓い、それと同時に凱旋門賞馬ソットサスの全弟を購入するというプランを描いていたのだろう。事実、この年にフランスの競りで父シユーニ、母スターレッツシスター、つまりシンエンペラー(当時1歳)を210万ユーロ(同約2億8000万円)で落札している。
それにしても、同一年度に凱旋門賞とBCクラシックに有力馬を出走させるなんて、世界の競馬サークルを見渡してもまれなことだ。いても”G1通算400勝”のエイダン・オブライエン調教師(アイルランド)くらいだろうか。しかも、このBCクラシックはさすがにダートの最高峰といわれるだけあって、いま思い返してもMLBのワールドシリーズにも劣らないほど、しびれるようなレースだった。 下馬評は3歳優勢。英国ダービー馬シティオブトロイをはじめ、アメリカのフィアースネス、シエラレオーネ、日本のフォーエバーヤングが人気を集めた。その他の日本勢もウシュバテソーロ、デルマソトガケと過去最強といえる面々で、期待値はかなり高かった。