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実は希少ではない? ダイヤモンドがここまで「高価」な理由

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PHP Online 衆知(Voice)

―――2007年、鉱物学者のロバート・ヘイゼン氏のもとに、一本の電話が入った。相手は、科学の研究や教育に助成するニューヨークのスローン財団。研究助成先を探しており、「生命の誕生を研究してほしい」という。 それに対してヘイゼン氏は「生物学以外の物理や化学、地政学を総合しながら地球上の炭素を調べないかぎり、生命誕生の謎に迫るのは無理でしょう」と答えた。つまり、「炭素」は、生命や地球誕生の根源になっているというのだ。各専門家たちと分野を超えて、生命の新発見に挑み続けるヘイゼン氏にインタビューした(取材・構成 大野和基:国際ジャーナリスト)。 ※本稿は月刊誌『Voice』2020年7月号、ロバートヘイゼン氏の「炭素が奏でる宇宙交響曲」より一部抜粋・編集したものです。 取材・構成:大野和貴基(国際ジャーナリスト)

ダイヤモンドの可能性

――この鉱物は何億年前にできたものだ、という事実をどう判断しているのでしょうか。 【ヘイゼン】鉱物の年齢は主にアイソトープ(同位体)で測定することができます。放射性同位体はある元素が不安定であるために、原子核が崩壊して何らかの放射線を放出する同位体のことで、ある時点で別の元素になります。 それを「半減期(放射性崩壊によって元素の半分が別の核種に変化するまでにかかる時間)」といいます。元素のなかには半減期が一秒のものもあれば、一年のものもありますし、百万年、十億年より長いものもあります。 たとえば、炭素の放射性同位体である炭素14の半減期は5700年ですので、同年後には炭素14の半分だけが残ります。この方法によって、火がつけられたとか、人間が死んだときから何年経ったかわかります。 ちなみに、ウラン238の半減期は、45億年です。もし地球や月の初期の試料(石)があれば、ウランと鉛の比率を測定すればその年齢がわかります。 ――ダイヤモンドはなぜここまで高価なのですか。 【ヘイゼン】地球上にはダイヤモンドの生産地が700カ所もあるにもかかわらず、企業によって流通がコントロールされているのです。デビアス社はロンドンに本社を置く大きなダイヤモンド企業の一つですが、その保管所には何十億ものダイヤモンドがあります。実際、ダイヤモンドは物凄い数が普及されていますが、デビアス社が市場を慎重に調整しています。 数年前、ロシアが新しい鉱山を開き、多くのダイヤモンドを生産したことで、0.5カラットほどのダイヤモンドが市場にあふれ出ました。デビアス社はそこで、小さなダイヤモンドを使った「テニス・ブレスレット」と呼ばれるものを発明し、高価な値段で売り出します。 彼らはダイヤモンドに神秘的な雰囲気をつくって価格を高く維持する能力に長けているのです。もちろん、ダイヤモンドにも多くのレベルがあり、大きく完璧なものは稀少で高価です。そういった代物ではなく、どこにでもあるダイヤが高級品としてショーウィンドウに飾られています。 ルビーやサファイア、エメラルドはダイヤモンドより1000倍も稀少です。しかし、デビアス社はダイヤモンドをベンチマーク(指標)にしました。さらに、現在の技術によって、ダイヤモンドは合成ができるようになったので、これは大きなチャレンジになるでしょう。 なぜかというと、合成ダイヤモンドは宇宙でもっともパーフェクトなクリスタルだからです。仮に、あなたが亡くなった場合、配偶者や恋人が火葬をして、集めた二酸化炭素をダイヤモンドに変えることができる。そして、宝石のついたネックレスとして身に着けられるのです。 ――研究資金が得られやすい鉱山はありますか。 【ヘイゼン】人は鉱物をいろいろな理由で研究します。鉱物は、生活を豊かにする道具のもとになるためです。ガラスにはケイ酸塩が含まれていますし、宝石にはアルミニウムや金(ゴールド)、指輪にはダイヤモンドが含まれています。 一方で、惑星がどのように形成されたか、地球の年齢を研究するツールにもなります。鉱物は歴史のもっともたくましい「保存者」です。太陽が消滅しても、大気が変化しても生命が絶滅しても、鉱物はそこに残っています。 何十億年前の鉱物が語る物語を理解し、人類がどこから来たのかを知りたいと思っています。いわば過去に魅了されているのです。逆に、将来何が起きるか予想したければ、過去に起きた変化をみればいい。 現在、気候変動をはじめとしたさまざまな問題に直面していますが、鉱物をみて何が過去に起きたのか、逆に将来何が起こるのかを推定できます。 ――人間の活動は地球温暖化にどれほど影響を与えていると考えますか。また、環境活動家であるグレタ・トゥーンベリ氏をどのように評価していますか。 【ヘイゼン】根本的に、政府が本腰を入れて地球温暖化問題にコミットしないかぎり、グローバル規模での対策はできません。インターナショナル・コミュニティとして全人類が関わるべきです。 かりに、温暖化を解決できるテクノロジーがあったとしても、これからどれくらいの速さで温暖化に変化が起きるのか、そして、その技術がどれくらいのスピードで温暖化を止められるのか、わかっていません。 毎年緩やかに暖かくなり、漸進的変化だったのが突然“tipping point”(臨界点)と呼ばれる点にぶつかるかもしれないのです。 グレタさんはこの問題に関して非常にはっきりとした態度で問題を提起しています。一方の政治家は、次の選挙のために、気を配らなければならない事案が数えきれないほどあります。 もし政治家が、惑星を救うために人の行動に非常に厳しい制限を加えるといえば、再選は難しいでしょう。なかには、気候変動はでっち上げであるという人もいるのです。地球温暖化は、グローバルな問題を人類がどう提起するか、という能力をテストするものでもあるのではないでしょうか。 ――未知の生物を知るためにはビッグデータが役に立ちますが、今後のAIの発達は未知の生物や鉱物、恒星等の発見にどれほど寄与するものでしょう。 【ヘイゼン】信頼できるビッグデータを利用すれば、鉱物から導き出される一種のパターンを発見できます。そうすると、新しい鉱物や未知の生物をみつけるためにどこを探したらいいか教えてくれるでしょう。まさに私はその研究をしていますが、そのためには信頼できる膨大なデータを蓄積しなければなりません。

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