茶色の濁流、道から手を伸ばすと「すくえそう」…避難した女性「恐ろしかった」
前線を伴う低気圧の影響で、滋賀県長浜市では4日夕から5日朝にかけて160ミリを超える大雨に見舞われ、市内を流れる高時川が氾濫したほか、姉川でも一時、水があふれる危険性が高まった。余呉、木之本、高月、びわ地域の計2665世帯(計6686人)に出された避難指示は午後3時50分に解除されたが、大雨が降った後は地盤が緩んでいるとして、彦根地方気象台は引き続き土砂災害への警戒を呼びかけている。(西堂路綾子、松久高広、小西望月)
最大69人避難
一晩の雨量が平年の8月1か月分に迫る大雨となった5日、県と同気象台は午前9時5分、高時川が氾濫したと発表した。下流域の平野部には複数の河川が流れ込んでおり、その後、近くを流れる姉川でも氾濫危険水位に到達。市内の避難指示エリアは午後にかけて徐々に拡大した。
公民館や小学校などの避難所には、正午までに最大69人が避難。午後7時までに余呉町上丹生と木之本町大見などの計24棟で床上・床下浸水が確認された。
高時川や姉川など3河川の合流地点に近い同市錦織町に住む女性(66)は、市からの避難指示を受け、夫(72)と長浜市立びわ中に避難。「茶色の濁流が勢いよく流れていて、道から手を伸ばすとすくえそうなぐらい水位が増しており、恐ろしかった」と話した。
高時川上流の県道は、押し流されてきた土砂や倒木によりあちこちで路面がふさがれ、一時通行止めに。川に架かる橋の手すりが水圧で曲がったり倒木で切れたりするなど、降雨の爪痕が残っていた。
県のまとめによると、人的被害は確認されていない。余呉町菅並では、水道設備が水没した影響で、全34軒で送水に不具合が発生。長浜水道企業団が給水車で応急対応を行った。
高時川のほか、余呉川、姉川でも一時的に水があふれたり、護岸の欠損が起きたりしており、県が状況を調べている。
交通網に影響
影響は交通網にも及んだ。余呉町の国道365号では椿坂トンネルの北約500メートル付近で土砂流出が起きたほか、県道4路線でも高時川の氾濫による冠水や路肩の欠損で通行止めとなった。午後6時現在、国道365号を含めた2路線2区間で復旧のめどが立っていないという。
鉄道はJR北陸線近江塩津―敦賀駅間で一時運転を見合わせた。陸路では、長浜市内でコミュニティバスを運行している余呉バスが全路線で一時運行を取りやめたほか、湖国バスも一部路線で終日運休とした。