【2020年のベスト・スモールカー】フォード・フィエスタ 非凡な訴求力の高さ 英国編集部選出
3年を経ても輝くフィエスタの訴求力
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) マツダ・ロードスターもそうだが、この2020年の受賞車の中で、フォード・フィエスタは古株に当たる。現行型の登場は2017年だが、3年を経過した今でも、コンパクト・ハッチバックの非凡な訴求力は変わらない。 【写真】日本未導入が惜しい フォード・フィエスタ (115枚) 7代目に当たるフィエスタのデザインは、やや控えめ。良くいえば熟成されている。それでいて、ライバルひしめくカテゴリーでフィエスタを輝かせてきた、活気あふれる動的性能という個性は、しっかり受け継がれている。 2017年以降、フィエスタの総合力を超えたライバルは、まだない。かなり接近はしているけれど。 特にフィエスタへ迫ったのが、5世代目へとモデルチェンジしたルノー・クリオ(ルーテシア)。しかし、完全に並ぶことはできなかった。 フォルクスワーゲン・ポロも、実用性に優れ、熟成された大人な魅力を備えている。それでも、快活なフィエスタと並ぶと、ポロの堅実で真面目すぎるような性格付けが足を引っ張る。 AUTOCARが選ぶコンパクトモデルには、落ち着いて目的地まで安全に移動できる以上のことを求めたい。視覚的な華やかさも欲しいし、平凡なエンジンではつまらない。 優れた動的性能と、日々の運転を喜びに変えてくれる、好印象な操縦性や機械的な洗練度も欲しい。ベースグレードでも。これらすべてを、フォード・フィエスタは平均的に高く網羅している。
ベースグレードでも興奮する走りを味わえる
現行型のフィエスタのスタイリングは、先代より滑らかなラインで丸みが強調されている。それでいて、シックなルノー・ルーテシアにも引けを取らない、華やかな雰囲気がある。スポーティなSTラインなら、エネルギッシュさも増す。 1.0L 3気筒のエコブースト・エンジンは、このクラスで特に元気なユニットの1つ。パワーも充分で、程よく威勢の良いサウンドも聞かせてくれる。高回転まで気持ちよく吹け上がり、6速MTを操る楽しみも備わる。 そして運転が楽しい。クイックでダイレクトなステアリングに、機敏で反応の良いシャシーが組み合わされている。低速域でも、ベースグレードでも、存分に興奮できる走りを味わえる。 これだけの要素が詰まったコンパクトモデルは、フィエスタだけといってもいいだろう。 ■審査員コメント Matt Prior(マット・プライヤー) 世界で最高のクルマは何か?と聞かれたら、ロールス・ロイスやフェラーリ、ブガッティといったクルマを思い浮かべるかもしれない。しかしわたしは、フォード・フィエスタのようなクルマだと、主張したい。 おそらくAUTOCARの読者にとっては、退屈な答えかもしれない。でも、これこそ真実だと思う。 おそらく開発には、膨大なコストが掛かっている。それでいて低価格だから利益率は低い。それでもフォードは時間をかけて、フィエスタに運転する楽しさを宿らせている。 フォードが充分に儲かっているのか、余計な心配をしたくなるほど。きっと、大丈夫なのだろう。
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