フォード・トルネオ・クーリエ 詳細データテスト 商用由来らしからぬ足さばきと乗り心地 価格は高い
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
良好な横方向のボディコントロールは、この手のクルマでは見落とされやすい要素だ。しかし、重い荷物を積んだ上にルーフボックスなどを取り付ける可能性が高いことを思えば、しっかりしたグリップやスタビリティ、そして多少なりともハンドリングの穏やかさに余力があることには意味があるといえる。 それらすべてを、このトルネオ・クーリエは備えている。平均的なバン由来のモデルに比較すると、乗り心地にはよりタイトな感じがたしかにある。これは、ダンパーとスプリングのレートによるものだ。そのフィールはいかにもフォード的で、コーナーやバンプを思ったよりもちょっとだけ速く、挙動を乱さずに駆け抜けることができる。 ステアリングも、やや重めの手応えとやや早いペースで同じように感じられる。たとえ、長めのホイールベースと平均的なグリップレベルが、結局はどうコーナリングしてもアジリティを感じさせないとしてもだ。 いったんコーナーへ入ると、このクラスのアベレージよりは多少元気に走るように思える。小さくロールするが、極度な傾きにはむしろうまく耐えている。また、適切なシャシーバランスとステアリングの威勢が、運動性の限界まで保たれる。その限界は、アウトドアで気球を追いかけたり夜明けの海を目指したりして、はたまた遅刻しそうで飛ばすくらいなら、十分以上に高い。 グリップ限界では、スタビリティコントロールがやや荒くでしゃばり気味に介入する。また、コーナー途中のバンプをちょっとハードに乗り越えると、ステアリングに少々キックバックが出て、アクスルがガチャガチャ言いはじめる。 どのクルマでもそうだが、気持ちよく走れるゾーンというものがこのクルマにもある。とはいえ、それは想像するより広い。
快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆
テストは穏やかな天候のドライコンディションで行われたが、このクルマの場合、その恩恵は小さいはずだ。それでも、騒音計は、ほとんどのコンパクトなファミリーカーに負けない静粛性を示した。 80km/hでは、風切り音やロードノイズ、エンジン音を含めて64dBA、113km/hでは68dBAで、スピードを上げると、四角いボディの影響が大きくなるといっていいだろう。しかし、乗用車でもとくに後者の数値がもっと大きいものは多い。また、2022年にテストしたダチア・ジョガーは湿った路面での計測だったが、どちらのノイズもより大きかった。 今や控えめなサイズになってしまった17インチホイールも、クルージング時のキャビンを静かに保った一因だろう。乗り心地もおおむね穏やかで、ショックはかなり抑えられている。とはいえ、速度を上げると、きついエッジを乗り越える際には多少の衝撃音が出る。標準装備の16インチホイールと65タイヤであれば、さらに快適かもしれない。 フロントシートはクッションの長さと傾きを調整できず、後席同様にちょっと硬めでフラットだ。しかし、とくに快適性が欠けているというわけではない。