フォード・トルネオ・クーリエ 詳細データテスト 商用由来らしからぬ足さばきと乗り心地 価格は高い
はじめに
フォードは最近、手頃なモデルのラインナップ空洞化が気になる。その理由は説明するまでもないだろう。欧州のエミッション規制が厳しさを増したことでコストが上昇し、安価なクルマで利益を上げるのが難しくなったからだ。そのため、低価格帯のクルマが突如として値上げされ、これまでのような台数は売れなくなるという負のスパイラルが発生。フォードのような大衆車メーカーには、とくにつらいところだ。 【写真】写真で見るフォード・トルネオ・クーリエとライバル (16枚) 昨年は、長年の主力だったフィエスタと、コンパクトSUVのエコスポーツが姿を消し、Bセグメントのラインナップはプーマのみとなった。その構成に多少ながら変化をもたらすのが、今回テストするトルネオ・クーリエだ。 フォードの新たなボトムエンドはルーマニア製。価格はもちろんだが、実用性や万能性も備え、これまでのフォードの小型車よりもアクティブなライフスタイルを送るファミリー層に訴求できる点でも販売台数が見込める。フォードで4つある商用バンの乗用バージョンで、少し前ならニッチモデルだっただろうが、主力級の活躍ができるだけの実力を秘めているのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
一見して、商用ベースの競合車の多くに対するアドバンテージがわかる。デザインは乗用車らしいもので、直立した大きなグリル、大面積のガラスハウス、フレアした前輪アーチや跳ね上がったデザインが印象的なウエストラインなどは、バンにシートとウインドウを足したようには見えない。 今回のタイタニウムは下位機種だが、上位グレードはさらに目を引くアイテムが備わる。アクティブ仕様には、タフな見た目のスキッドプレートやホイールアーチのクラッディングが装着され、有償で白か黒のコントラストルーフにすることもできる。 4.3m級のボディはルーフが高く、サイドがスクエアなMPVスタイルで、キャビンは5人乗り。シトロエン・ベルランゴのショートボディよりはわずかながら小さく、ロングボディは用意されない。そこは、フォルクスワーゲン・キャディをベースとした、7人乗りのトルネオ・コネクトの領分だ。 フォードはこの手のクルマをマルチアクティビティヴィークルと呼び、一般的なMPVとの差別化を図るとともに、使用目的を明確化している。単なるファミリーカーではなく、趣味の道具なども積み込めるクルマということだ。高さのあるボディサイドとテールゲートは、中型SUVなどよりも大きく高い積載エリアを実現。天井が高く角がスクエアなので、自転車のようなかさばる積荷も楽に載せることができる。 名目上は商用ベースだが、機械的にはそうとも言い難い。プラットフォームは、プーマやフィエスタと同じグローバルBで、ホイールベースをプーマより100mm以上延長している。フロントがストラット、リアがビームアクスルという足回りはBセグメントの典型で、コイルスプリングとツインチューブのガスダンパーを前後に備える。 内燃エンジンは、商用モデルはガソリンとディーゼルを揃えるが、このトルネオ・クーリエはガソリンのみ。長年使われている998cc直3ターボのエコブーストで、最高出力は6000rpmで125ps。フルスロットルではオーバーブーストが効き、20.5kg-mの最大トルクを30秒のみ発生する。 EVのe-トルネオ・クーリエは136psで、航続距離は370km。今年の遅い時期に、ガソリンモデルと入れ替わる予定だ。