TRI4TH「ずっと捕まえられないスピード感で」常に挑戦を続けるバンドの矜持:インタビュー
5人組ジャズバンドのTRI4THが10月7日、メジャー3rdフルアルバム『Turn On The Light』をリリース。本作は、HIP HOPシーンからSANABAGUN.のリベラルa.k.a 岩間俊樹氏をfeaturingした「The Light feat.岩間俊樹(SANABAGUN.)」、日本を代表するSKAパンクバンドKEMURIのHORN隊とコラボした「For The Loser feat.KEMURI HORNS」、ジャズの名曲「Moanin'」のSKAカバーなど、これまでのインストジャズの枠を超えたボーダレスな全11曲が収録。“混沌とした世の中を照らすような作品になるように”という意味が込められた本作の話題を中心に話を聞くとともに、メンバーにそれぞれのこだわりや今後のビジョンを語ってもらった。【取材=平吉賢治】
自分達の現状の最高傑作
――9月1日のブルーノート東京公演の感触はいかがでしたか。 伊藤隆郎 約半年ぶりに人前で演奏ができて素直に嬉しかったです。お客さんがいる状態と画面の向こう側のみなさんにも感じて頂けるという、新しい一歩が踏み出せたんじゃないかなと思っています。 ――本作について、前回インタビューで「3枚目はホップ・ステップ・ジャンプの“ジャンプ”にあたる」と仰ってましたが、完成していかがでしょうか。 伊藤隆郎 メンバー全員であらゆる知恵を出し尽くしてトライしました。1、2枚目のアルバムは自分達5人だけで完成させたけど、3枚目で集大成になる作品ができたらいいなと。そんな中でSANABAGUN.さんからMCの岩間俊樹君を迎えた楽曲と、KEMURIさんのホーン隊をフィーチャリングした楽曲の2作品を主軸に、あとは自分達が大切にしてきた「Fiesta」やジャズの名曲「Moanin'」をカバーさせて頂いたりと、隙のない一枚、自分達の現状の最高傑作ができたと思っています。 ――特に力を入れた点は? 織田祐亮 KEMURI ホーン隊のみなさんと一緒に作らせて頂いた「For The Loser」は、計5人のホーンセクションという今までで最大の編成でお届けしているんです。AセクションはTRI4THがアレンジ、BセクションはKEMURI ホーン隊だけで演奏、CセクションをKEMURI ホーン隊とTRI4THが入り乱れて一緒に演奏とか、普段やらないアレンジだけど、どうやったらお互いの個性を1曲に込められるかと話してKEMURI ホーン隊のみなさんにもお知恵を頂き、結果とても素晴らしいものが出来たと思っています。 伊藤隆郎 この曲に関しては、いかにJ-POPシーンに食い込んでいけるかとか、そういった垣根を超えたいと意識するところがあって。TRI4TH流の歌ものをいかに完成させるかというところをKEMURIホーン隊のみなさんにご協力して頂いて、さらに豪華な1曲になったと感じています。 ――藤田さんが力を特に入れた点は? 藤田淳之介 全体のジャンル感が幅広く、それぞれの演奏も色んなアプローチがあるんです。サックスの音色でも今まで使っていなかったサブトーンやドラムのマイキング、ベースの音作り、ピアノも別の鍵盤を使ったり、技術的にも自分達の持ちうる可能性をちりばめて、細部も楽しめる味わい深い作品だと思っています。今回はコロナ禍でいつもより考える時間があったんです。 竹内大輔 確かにアレンジを詰める時間がとにかくありました。ピアノのバッキング一つとっても1カ月くらいやってきたのを「やっぱ違うな」と変えたり。一音一音ベースラインを決めるとか、ジャズというよりポップス的な作り方もしたし「どこまでやったらずっと聴いていても違和感がなくなるようになるか」と、みんなで詰めました。 ――ポップ感については関谷さんも意識したところがあるのでしょうか。 関谷友貴 あります。前作の録音後にウッドベースともう一度見つめ直して、120年前のオールドのウッドベースを買ったんです。前回まではロックフェスでも、ウッドベースでもロックミュージシャンとやりあえるようにサウンド作りをしていったんです。今回はそのサウンドに加えて、もう一度ウッドベースの生鳴りの素晴らしい音を昇華させて表現しようとチャレンジしました。 ――今作は全てウッドベース? 関谷友貴 全曲そうです。でも同じ音色感ではなく、マイキング(マイクの設置位置や角度など)やエフェクターの使い方を1曲ずつ変えてます。 ――個人的には11曲目「EXIT」のベースサウンドが印象的です。 関谷友貴 ありがとうございます。これは今回一番試みたかったサウンド感です。改めて制作期間を何カ月もとって、メンバーでいい曲を作ってアレンジして、この曲を一番よい形でアウトプットするにはこのサウンドだと満足しています。 ――ちなみに素朴な疑問ですが、インストゥルメンタルに曲名をつける着想は? 伊藤隆郎 みんな作ってくる時に仮タイトルをつけてくることも多々あります。その音楽とフィックスしていればそのままいったりするけど、作っていく中で曲調が変わって「これ違うな」と変わる時もあります。本作の「Sailing day」は最初「Kaminari」というタイトルでした。現状のアレンジに辿り着いてレーベルの方と相談して「せっかく素敵な曲に仕上がったのに『Kaminari』でいいの?」というディスカッションがあって(笑)。インストゥルメンタルだからこそオーディエンスのイメージは無限だと思うので想像してくれるものは幅広いと思います。