J1で“監督シャッフル”…福岡の長谷部氏→川崎、川崎の鬼木氏→鹿島…2人の指揮官は新天地でチームを復活に導けるのか
今シーズンを振り返れば、川崎はリーグ戦で8位に終わったのをはじめ、ルヴァンカップは準決勝敗退、天皇杯は3回戦でJ2の大分トリニータに敗退と、鬼木監督が指揮を執った8シーズンで2年ぶり2度目の無冠に終わった。 鬼木監督の勇退にあたって、川崎の竹内弘明強化本部長はこう語っていた。 「さまざまな選手が(移籍で)抜けて、サッカー観も大きく変わってきたなかで、フロンターレが次にどのような道へ進むのかを考えたときに、クラブの方から『未来へ向けて進みたい』という話を鬼木監督にさせていただいた」 8年間の指揮で生じた、ある意味でのマンネリ感を一掃したい、という意図も伝わってくる。新たに迎える長谷部監督は、堅守速攻スタイルを突き詰めて福岡に一時代をもたらした。同時にラモス瑠偉やビスマルク、北澤豪らスター選手がそろい、黄金期を迎えていた現役時のヴェルディ川崎の中盤で出場機会をしっかりと確保していた。 福岡では選手の陣容的にも、インテンシティーの高い堅守とカウンターに舵を切らざるをえない事情もあった。現役時代をもとにした戦術の引き出しは多いと見ていい。さらには選手から寄せられる人望の厚さを物語るエピソードもある。 2022年夏に、当時の福岡のエースストライカー、山岸祐也(31、現・名古屋グランパス)にガンバ大阪から獲得のオファーが届いたときだった。監督室に呼ばれた山岸は、いい意味で指揮官に裏切られ、結果として残留したと後にこう明かしている。 「何を言われるのか、引き留められるのかと思ったら、監督は真っ先に『おめでとう』と言ってくれた。しかも『超』の付く笑顔で『オファーは祐也が評価されている証しだ』とも。その言葉を聞いたときに自分の心をグッとつかまれたというか、この人はものすごく大きな器の持ち主だなと。さらに厚い信頼関係が生まれました」 鹿島の国内三大タイトル獲得は、リーグ戦と天皇杯の二冠を獲得した2016シーズンまでさかのぼる。特に歴代最多の8度の優勝を誇るリーグ戦では、2017シーズン以降もすべて5位以内をキープしながら、頂点に手が届かなかい状態が続いてきた。 風間八宏前監督(現・南葛SC監督)が種をまき、育てあげてきた「ボールを蹴る、止める」を継承・発展させて数々のタイトル獲得につなげてきた鬼木監督だが、選手および指導者としての原点は敗北を頑なに拒否する鹿島のメンタリティーにある。