鬼滅の刃、新たな〝風習〟を生み出す 九州で広がる「三社参り」 「突然降って湧いたように多くの方々が」
今や社会現象となっている大ヒットアニメ「鬼滅の刃」。JR九州とJR東日本では作品とコラボした蒸気機関車を走らせ、即日満員御礼となるなど、観光への影響も少なくありません。その中で九州にある三つの神社を巡る「鬼滅三社参り」もファンの間で誕生しつつあります。(ジャーナリスト・河嶌太郎) 【写真】「鬼滅の刃」聖地が福岡に? 作品に登場しないのにファンが集まる場所
観光へ大きな影響
「鬼滅の刃」の人気ぶりはすさまじく、原作漫画の累計発行部数は1億部を突破しました。10月16日に公開された「劇場版『鬼滅の刃』 無限列車編」は、公開から1カ月で興行収入が230億円を超え、歴代最高のペースで記録を伸ばし続けています。 観光への影響も大きく、例えばJR九州とJR東日本では、「鬼滅の刃」とコラボした蒸気機関車を休みの日などに走らせています。特にJR九州の「SL鬼滅の刃」では指定席券が販売された瞬間、売り切れるほどの人気ぶりです。 走っている蒸気機関車は現存する日本最古の蒸気機関車としても知られ、1922年(大正11年)に作られたものです。「国鉄8620形蒸気機関車」という1914年(大正3年)から1929年(昭和4年)にかけて製造されたモデルで、通称「ハチロク」と鉄道ファンの間で呼ばれ親しまれています。 「鬼滅の刃」も大正時代を舞台にした作品で、映画に登場する蒸気機関車もこの「ハチロク」に酷似しています。こうした点からファンの間で作中のモデルではないかといわれています。
三つの「竈門神社」
一方で、こうした実態がないにもかかわらずファンを集めているところがあります。 代表的な例が九州にある三つの「竈門神社」です。これは、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の名字が同じというのが直接のきっかけとなっています。いずれも作品に直接登場したり、公式から明確なモデルとされたりしている舞台ではありません。 三つある竈門神社は、福岡県太宰府市の「宝満宮竈門神社」、筑後市の「溝口竈門神社」、そして大分県別府市の「八幡竈門神社」です。 作品とのつながりは全くないわけではありません。 宝満宮竈門神社は太宰府天満宮の「鬼」門封じのため建立された神社であり、原作者の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)さんも福岡県出身とされている点。溝口竈門神社では福岡つながりに加え、劇場版で炭治郎が「炎柱」の煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)に「溝口少年」と呼ばれる場面があること。そして八幡竈門神社では、社殿天井に描かれている龍の絵が、炭治郎が使う必殺技「生生流転」を繰り出すときに登場する龍に酷似しているという点などがあります。 規模的には太宰府天満宮から近い宝満宮竈門神社、八幡竈門神社の順で大きく、いずれもお守りや御朱印の授与もされている地元では名高い神社です。しかし溝口竈門神社は小規模で、常設している社務所はありません。が、どれも大勢の「鬼滅」ファンが訪れています。