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コロナ後の働き方? 「ジョブ型雇用」に潜む“コスト削減”の思惑

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ITmedia ビジネスオンライン

 「ジョブ型に変わる」「ジョブ型の人事制度」「新卒もジョブ型」など、ここにきて毎日のように「ジョブ型雇用」という文字がメディアに踊るようになりました。 【時間ではなく成果を重視する「ジョブ型」が注目されているが……】  コロナ禍で在宅勤務が広がり、時間にとらわれない働き方へのニーズが一段と強まっていることが理由とされています。おそらく今後は「働き方改革」(まだ、やっていたのかという感じですが……)という名の下、「ジョブ型雇用」を適用する法律が整備されることになるでしょう。  しかし、結論から言うと、この議論は新しいようで新しくない。ただ単に、企業が雇用義務を放棄できる方向に向かっているにすぎません。  そこで今回は「ジョブ型の未来」について、あれこれ考えます。

「高プロ」の導入企業が少ない理由

 高度プロフェッショナル制度、いわゆる「高プロ」という言葉を覚えてますか? 今から2年前、これまた新聞紙面に毎日のようにレギュラー出演していた“新しい雇用形態”です。  高プロは「労働時間規制から除外し、働いた時間ではなく成果で評価」する制度です。  議論の俎上に上がった当時、裁量労働制で働いている人の過労死が問題になっていました。IT企業で裁量労働制のもと働いていた男性会社員(当時28歳)が、くも膜下出血で過労死。亡くなる直前の2カ月間の残業時間は月平均87時間45分で、徹夜を含む連続36時間の勤務もあったとされています(みなし労働時間は1日8時間)。また、裁量労働制を適用するテレビ局の制作部門で、ドラマを担当していた男性プロデューサー(当時54歳)は心不全で過労死。亡くなる直近3カ月の残業時間は、月70~130時間でした。  そういったリアルが問題になっているにもかかわらず、政府は「問題ない」という認識を一向に変えず、安倍首相に至っては「労働者のニーズに答えるために、待ったなしの課題」と豪語し、法案は成立したのです。  ところが、ふたを開けてみると「高プロ」が適用されたのは、法施行から1カ月でたったの1人。あれだけすったもんだの末に導入されたのに、全国でたった1人にしか適用されませんでした。  理由は実にシンプル。高プロを導入すると、企業は高プロを適用した社員の「過労防止策の実施状況」を報告する義務があったため、企業側が制度を適用したがらなかった。つまり、「労働時間をきちんと管理する」という雇用者に求められている義務を果たすことを企業が嫌ったのです(現在、制度の利用者は414人にまで増えた)。  そもそも「年収1075万円以上」という、労働人口(管理職含む)の0.01%の労働者しか対象にならないこの制度を導入したのは、蟻の一穴にしたかったから。高プロと同時期に導入が検討されていた「企画業務型裁量労働制の適用拡大」、別名「定額働かせ放題法」は、大バッシングを受け見送られました。  どちらも法律が定める労働時間規制から完全に逸脱する制度ですが、最大の違いは年収の制限の有無です。おそらく“お偉い方たち”は、「取りあえず時間規制を外す制度をつくっちゃって、あとはどんどん拡大していきゃいいじゃん!」と考えた。……と、私は思っています。

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