CO2多排出の航空機は乗らない! 不名誉レッテル「飛び恥」脱却の切り札、バイオマス燃料の実態とは
日本語では「飛び恥」
フライトシェイム(Flight Shame)という言葉をご存じだろうか? 二酸化炭素の排出量の多い航空機の利用を避けようとする運動のことであり、日本語では「飛び恥」とも呼ばれている。 【事前にチェック!】日本の運輸部門における「二酸化炭素」排出量 この言葉は2017年に北欧のスウェーデンで生まれ、ヨーロッパ全土に広がったといわれている。 これに対し航空業界は、SAF(再生航空燃料)の使用により、二酸化炭素排出量をゼロにしようと取り組んでいるところだ。今回は、SAFやその製造における課題についてリポートする。
航空機業界で注目の「SAF」
ヨーロッパで広がっているフライトシェイムの考えにより、航空機への見方が以前に増して厳しくなってきた。実際、 「多量の二酸化炭素を排出してまで遠くに旅をしたいのか?」 という問いかけに呼応するように、旅行の形が大きく変わろうとしている。 国土交通省の「輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(旅客)」によると、公共交通機関の中では航空機が二酸化炭素の排出量が最も多く、 ・バスの約1.7倍 ・鉄道の約5.8倍 とのことである。 この状況を改善すべく航空業界に注目されているのが、非可食部バイオマス(トウモロコシの茎など人間が食べない植物材料)を原料とするSAFだ。 ヨーロッパの大手航空会社などの航空団体は2021年7月、二酸化炭素排出実質ゼロを2050年までに達成すべくイニシアチブを立ち上げ、その中でSAFの導入促進を重点項目のひとつとしている。 また日本においても、全日本空輸や日本航空、日揮ホールディングスなど国内16社が、2022年3月にSAFに関連する団体を立ち上げた。
こんなにもある「バイオ◯◯」
航空業界が現在注目しているSAFは、 「バイオジェット燃料」 とも呼ばれている、廃食用油や生ごみなどの再生可能な生物資源(バイオマス)を原料にした燃料だ。 これと似たような名前の「バイオディーゼル燃料」は、以前よりバスやトラックに使用されており、耳にしたことがある人が多いのではないか。再生可能な生物資源を原料にした主な「バイオ◯◯」は、以下のとおりである。 ・バイオエタノール:糖質やでんぷん質の原料の糖分をアルコール発酵させて製造。ガソリンと混合して自動車の燃料として使用されている ・バイオディーゼル燃料:原料油脂を精製してグリセリンを取り除き製造。軽油と混合してバスやトラックの燃料として使用されている ・バイオガス:原料の有機廃棄物を、メタン菌などの微生物に発酵させて製造。車両からボイラーなどに幅広く活用されている ・バイオジェット燃料:原料油脂の精製やエタノールから製造。近年では、微細藻類や木材チップなどの木質系セルロースを原料とする製造方法も開発されている いずれのバイオ燃料も、二酸化炭素排出ゼロにつながる仕組みは同じだ。 バイオ燃料を使用すると、当然のことながら二酸化炭素が発生する。しかし、バイオ燃料の原料となる植物は、成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収していることから、燃焼時に発生する二酸化炭素と相殺され、結果として二酸化炭素排出量がゼロになるという仕組みなのだ。