空気から肉を生成、絹で食品の品質維持。進化するサーキュラーテクノロジー
「サーキュラーエコノミー」というコンセプト
持続可能な開発目標(SDGs)に関連して注目を集める「サーキュラーエコノミー(循環経済)」。使い捨て型ではなく、あらゆる消費を循環させる経済を指す言葉だ。 海洋プラスチックごみからスポーツシューズをつくりだすアディダスの取り組みなどがサーキュラーエコノミーの事例として挙げられる。 持続可能な開発の先にある理想の経済といえるが、非循環経済が「普通」となっている現在においては、すべてのものが循環するサーキュラーエコノミーとはどのようなものなのか、具体的に想像することは難しいといえる。 しかし、サーキュラーテクノロジーの技術革新動向を知ることは大いに役立つかもしれない。どのようなことが可能となっているのか具体的なイメージを持つことで、サーキュラーエコノミーという抽象的なコンセプトを、具体的に捉えることが可能となるからだ。 たとえば、空気(二酸化炭素)から肉を作り出す技術が存在すると聞くとどうか。サイエンスフィクションのような話だが、この技術はすでに存在する。 自然界においては、動物が排出する二酸化炭素を植物が吸収し成長する。その植物は草食動物の食料に、また草食動物は肉食動物の食料となり、それらの動物が排出する二酸化炭素をまた植物が吸収するという循環が起こっている。 上記の技術は、この自然界と似た循環を人間の消費活動にも適用できる技術となる。
ヨーグルトをつくるように、二酸化炭素を発酵させ肉をつくる技術
この技術を開発するのは、カリフォルニアのスタートアップAir Protein。1960年にNASAで考案されたアイデアを基に開発した技術だ。 二酸化炭素をたんぱく質に変化するHydrogenotrophsという微生物を活用することで、空気からたんぱく質を生成。それを加工することで人工肉をつくりだせる技術となる。 これを聞いただけではピンとこないかもしれないが、植物の成長メカニズムを思い浮かべると理解を助けてくれる。人間の目からすると、植物の成長は、特に形あるものを吸収している訳ではないが大木に成長するものもあり、不思議な現象に映る。その背後で起こっているのが、水と二酸化炭素の吸収と光合成だ。 AirProteinは同社ウェブサイトで、空気ベースの肉をつくる過程は、ヨーグルトをつくる過程に似ていると説明している。 まず、用意するのは二酸化炭素、水、微生物(Hydrogenotrophs)。二酸化炭素は空気から抽出する。この二酸化炭素と水、微生物を発酵装置の中に入れしばらく待つことで、微生物が二酸化炭素を吸収しアミノ酸を生成、これがたんぱく質比率80%の物質に変わるという。植物の成長には数カ月かかるが、AirProteinのたんぱく質生成は数時間で完了する。 国連食糧農業機関(FAO)によると、2050年には世界人口は100億人となり、食糧生産を現在比で70%高める必要がある。しかし、利用できる土地は限られており、需要増加分すべてに対応するのは難しい状況だという。 AirProteinのような、水平的でなく垂直的にスケール可能なソリューションが求められるところだ。