最新鋭「ロボット義手」のお手並み拝見─アフガニスタンで右手を失った陸軍大尉も感動
脳信号で動かすロボット義肢の動画を見たことはあるかもしれない。だがいま筋肉信号をAIがキャッチして動作に変え、しかも学習していくという技術が、アメリカで認可目前だ。精度がかなり上がり、しかも手頃な価格になるという。その目を見張る精度とは? 「ブレインロボティクス」社の技術者たちが生み出した次世代の人工装具は、現在使われているほかのロボット義肢よりも動かしやすく、また手頃になるはずだ。 これは人工知能によって駆動する義手で、装着者は各指を正確に制御して、多くの動作や握り方ができるようになる。 この義手はいま、米食品医薬品局(FDA)の試験段階にある。同社はこの技術を、ユーザーとなる人々にも試してもらっているところだ。 脳からの信号で動く人工義肢の世界で、高機能の人工装具は高価すぎて、その恩恵を受けられる多くの人々の手に届かないと同分野の研究者たちは言う。 ブレインロボティクスの機器は、その解決策になることを目指している。同類機器の相場より3割低い価格設定からスタートする予定だ。 ブレインロボティクスの義肢が他社製品といちばん違う点は、そのアルゴリズムだ。微少な筋肉信号を検知し、それを手の動作に変換し、徐々に学習していくのだ。 「イノベーションはアルゴリズムにあります。つまりソフトウェアにあるんです」と言うのは、ブレインロボティクスのCEOマックス・ニューロンだ。 「ユーザーにこれほど本当に正確で、本物と同じような制御を提供できるイノベーションが、他社との違いです」 当初は、脳信号を介して人工義肢を制御しようとしたが、その後、筋肉信号を測るほうがはるかに確実なことがわかったとニューロンは言う。
「ジェンガ」もできる!
研究者たちがこの機器を開発したのは、ケアリー・デュバルのような人々のためだった。デュバルは、アフガニスタンで右手を失った陸軍大尉だ。 デュバルは12月初めからこの義手を試しはじめ、数週間かけて上手に使えるよう練習してきた。 このロボット義手で、「ジェンガ」をやったり、水筒を開けたりといった動作がわりと容易にこなせるようになった。ブレインロボティクスのアルゴリズムを使わないほかの義手だと、こうしたタスクは達成するのが難しかったとデュバルは言う。 「義手を内側に曲げられるし、人差し指を突き出した状態から、親指と人差し指で摘まむ動作にも変えられます。 コンピューターのマウスもキーボードも使えるなんて、すごい久しぶりです。コンピューターゲームはこの6年やってませんでしたから」 およそ200万人のアメリカ人が手足を失って生活している。そのうち50万人が上肢を失っている。 人工義手を求めてきた人々は長年、動かない、限られた機能のものを使うほかなかった。 一方、最近になって出てきたロボット義肢の多くは、起動するのにスイッチボタンを押したり、振ったりする必要があった。指の動作も限られており、装着者ができるのは、予め決められたいくつかの動作を切り替えるくらいだった。