黒幕介入の阪神監督人事に暗黒時代再来危惧
揚塩社長は矢野2軍監督へ監督要請もメディア対応せず
藤原次期オーナーは、ダミー役をさせられ汗を流したフロント幹部をフォローしなければならないし、球団内の情報の共有、組織の連携、1本化を徹底してガバナンスを整備する必要がある。監督を代えてもフロントのバックアップ体制がガタガタではチーム再建などありえない。 ただ混同してはならない問題はある。 金本監督に辞任勧告をしたという藤原次期オーナーの決断である。SNSで監督批判が拡散、閑散としはじめた甲子園のスタンドに危機感を抱いたのかもしれないが、2年の契約を残し「辞めてくれ!」と言うのは、その2年分の給料を支払うということである。今回の裏事情も手伝って、金本監督へ行った辞任勧告への是非論が出ているが、球団内で、情報を共有して、早い段階から金本監督に球団の方向性を伝えるという“正しい手順”さえ守っていれば英断だったと思う。 ノムさんが「外野出身監督無能論」を説くが、金本監督も指導者として何かが足りなかった。1試合、1試合の細かいゲームマネジメントのミスだけでなく、チームから競争の原理をなくし、重視しなければならない守りを後回しにして攻撃型チーム構築に走った。昨年まで他球団が恐れたブルペンの勝利の方程式も崩壊させてしまい、その整備は後回しになっていた。求心力も落ちていた。その責任は重い。コーチングスタッフを内部で入れ替えたくらいで来季は何も変わらなかっただろう。 だが、昨年オフに2年間で、優勝も日本一も果たしていない金本監督と、新たに3年契約を結んだのは本社である。誰が金本監督のどこをどう評価したのかは不明だが、監督人事はオーナーマター。球団は2年契約を提示して金本監督からの申し入れで、もう1年プラスしたそうだが、そもそも、この3年契約にボタンのかけ違えがあった。なのに最下位の責任を金本監督一人に押し付けては未来はない。 巨人、阪神は人気球団ゆえの宿命があり、常に結果責任を問われ、球団側がついポピュリズムに走り、描いたビジョンを貫けないという環境にはある。だからこそ、まず説得力のあるビジョンを立て、その野球を実践するにふさわしい監督を吟味し現実的な目標を設定して監督打診をすべきである。 揚塩社長は13日、宮崎を訪れ、矢野2軍監督と1時間半の会談。監督要請を行ったと見られる。宮崎のホテルには報道陣が殺到したが、揚塩社長はメディア対応をしなかった。 前日の12日は動かなかった。いや何らかの理由があって動けなかったのか。同日、夜の9時になって自宅前で記者団に藤原次期オーナーは誠実に対応したが、「(揚塩社長からの)報告は受けていない」とコメントしている。金本監督の辞任勧告を水面下で揚塩社長に対して指令してきた人物が次期監督との交渉内容の報告を受けていないという。 冒頭に書いた球界関係者のコメントが筆者の頭をかけ巡る。 「誰も阪神の監督をやりたがらないんじゃないか」 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)