<高校サッカー>東海大仰星、大金星の裏に強豪・ラグビー部の存在
中務監督が在学していた当時から、東海大仰星といえば真っ先にラグビー部が連想された。1984年の創部で、大阪第一代表で出場している今年度を含めて、全国高校ラグビーフットボール大会には4年連続17度の出場を果たして4度の日本一を獲得。OBには元日本代表のレジェンド・大畑大介がいる。 翻ってサッカー部は、高校が創立された1983年の創部とラグビー部より歴史が長い。200校以上が集う激戦区・大阪でなかなか全国切符を手にできないなかで、選手権の最高位は前出通りベスト8、インターハイのそれは2回戦に甘んじていた。 「それでも、私が在学していたときもいま現在も、ラグビー部をライバルと感じたことはないんです。競技自体が違うということもありますけど、当時から毎日同じグラウンドで、隣同士で練習しているので、切磋琢磨しながらお互いを高め合ってきたという関係ですね」 今年度の部員数は、ラグビー部の106人に対してサッカー部も117人。ともに大所帯を抱えるなかで、グラウンドを半分ずつ使用して練習している。正規のピッチの半分という点で練習メニューは限られるが、それ以上に得られるものがあると中務監督は笑う。 「隣で練習していて常に感じることは、ラグビー部の部員たちが仲間に対して熱い言葉を投げかけ合っていること。練習を通じて仲間に強く変わってほしいと思う心、お互いに高め合っていく相乗効果を含めて、ものすごく熱いものを感じています」 ラグビー部が4度目の日本一を獲得した昨年度大会の決勝戦を、松井をはじめとするサッカー部は花園のスタンドで観戦している。しかし、勇気をもらって臨んだはずの新チームによる初の公式戦は0対4の完敗。相手は阪南大高のBチームだった。どん底の船出だった1年前を、松井はこう振り返る。 「あのころは一人ひとりに責任感がなくて、チームとして成り立っていなかった」 3年生に進級すると、松井はラグビー部のキャプテン、山田生真とクラスメイトになった。率いるチームの状況や競技観など、思いの丈を語り合う機会が増えるごとに、「もっとやらなきゃいけない」という反省の念が松井の心中にこみ上げてきた。 「ラグビー部は学校内でも当たり前のようにゴミを拾っているし、どのクラブの部員よりも挨拶する声が大きくて、授業態度もしっかりしている。サッカー部も見習う必要があったし、日々の練習でもお互いにもっと言い合うことを含めて、熱意をもって取り組まないといけないと思った。ラグビー部がいるからこそ、サッカー部も成り立っている。彼らに負けたくない思いで、この1年間やってきました」 練習中に厳しい言葉をぶつける役目を3人の副キャプテンに任せ、松井は個々の選手を呼び出しては改善点や注意点を伝える裏方の仕事に徹した。ラグビー部に追いつけとばかりに、精神的にたくましくなっていくキャプテンの姿を中務監督はこう見ていた。 「他の部員たちが気づかないことに対する声のかけ方や、かける声の内容という点で成長が感じられましたよね。大所帯の組織になると全員が同じベクトルを向くのは難しいんですけど、そのなかで松井は純粋に組織を動かしていこうと考えてきたので」