《広角レンズ》台湾の報奨旅行に商機 茨城県誘致、1社3000人規模も 宿泊や飲食、効果絶大
インバウンド(訪日客)の拡大に向け、茨城県が台湾のインセンティブツアー(報奨旅行)誘致に力を入れる。台湾では優秀な成績を収めた従業員を旅行に招待する企業が多い。長期間にわたり安定的に観光地や宿泊施設、飲食店に客を呼び込めるため、地域への経済効果が期待される。茨城県ならではの花風景、食、体験メニューをPRし、需要取り込みを狙う。 11月上旬、報奨旅行に参加した観光客36人が同県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園や同県大洗町の神社などを訪れた。台湾・台北在住の葉東倉さん(70)は「紅葉を見るのが楽しみ。茨城の神社では荘厳さを感じる」と声を弾ませた。 ツアーは台湾・台北の旅行代理店が現地の石油小売り会社と契約。5月中旬~12月の約7カ月間、5都府県を同社の社員など計3000人が巡る。茨城県ではひたちなか市のホテルが昼食を提供する商談をまとめた。 ホテルを運営する長寿荘の上島誉郎シニアアドバイザー(68)は「ランチの売り上げを確保できるのは大きい」と強調する。今後も宿泊を伴う観光客の獲得を目指し、現地との交渉を強める考えを示した。 ■消費額2倍 観光庁の統計によると、2023年の台湾からの県内延べ宿泊客数は過去最多の4万2070人に達した。1人当たりの観光消費額や再訪率の高さから、県は台湾を訪日客誘客の重点市場に位置付けている。 同庁調査による17年度の報奨旅行の1人当たり消費額は約32万円。一般観光客の約2倍に当たり、経済波及効果が高い。 こうした傾向を踏まえ、県は報奨旅行をコロナ禍以降の誘客戦略に加えた。昨年2月の「いばらき大商談会」を皮切りに、同年秋の台北、高雄の国際旅行博に出展。県内の観光事業者と現地との商談の場を提供してきた。 今年は台北のツアーのほか、高雄の旅行代理店が企画する鹿島神宮(同県鹿嶋市)や道の駅いたこ(同県潮来市)、偕楽園(同県水戸市)などを巡る報奨旅行の誘致に成功。水戸市のホテルが8~12月、宿泊客計2500人を受け入れる契約を交わした。 ■周遊追加を 県独自の試算によると、台北、高雄の代理店2社の報奨旅行により、県内の観光消費額は約7000万円に上る。県は「長期間の宿泊部屋の確保や食材調達など制約やリスクもあるが、その分規模の大きな経済効果が見込める」と利点を挙げる。 ただ、コロナ禍後の台湾観光客は首都圏へのニーズが高まる。県は「花」「食」「体験」をテーマに他県にはない観光の魅力を伝え、首都圏周遊の日程に茨城県を加えるよう促す考え。台湾最大手「ライオントラベル」の担当者を対象としたファムツアー(視察旅行)を実施し、報奨旅行の商品造成を求めた。 県観光誘客課の担当者は「さらなる大型の契約につながる企画をアピールし、報奨旅行を茨城県に少しでも多く呼び込みたい」と意気込む。
茨城新聞社