川口のクルド人「難民でなく移民」「いなか出身者の行動」トルコ人著名ジャーナリスト語る 「移民」と日本人 クルド人が川口を目指す本当の理由⑤
イェトキン氏が親しくしているトルコ政府の閣僚がいる。メフメト・シムシェキ財務相(57)。
同国内ではクルド系の国政政党があるほか、閣僚、国会議員、判事、幹部公務員などの要職に就いているクルド人も多数いる。1980~90年代に首相と大統領を務めたオザル氏もクルド系だったことで知られる。
シムシェキ財務相はトルコ南東部のクルド人の多い地方の村で、9人きょうだいの末っ子に生まれた。苦学して欧米の投資銀行などでエコノミストとして働き、トルコ政界入りした立志伝中の人物だ。
イェトキン氏は「私は彼をよく知っているが、本当に努力していまの地位にまでなった人だ」。
自身がクルド人であることを公言しており、副首相時代の2016年、米国での記者会見で、イランのクルド人記者から英語でクルド人の将来について質問された際、「私はトルコのクルド人だ」とクルド語で答えて話題を呼んだ。
今回のトルコ取材で、クルド人の政治家や経済人に取材を申し込んだが、断られることが多かった。一方で、当初は喜んで取材に応じても、後日「私のことを記事に書かないでほしい」と連絡があったことも再三だった。
この過程そのものに、トルコでの「クルド人問題」の複雑さが表れているようだった。自身がクルド人だと表立って言えるのは、シムシェキ財務相のような完全な成功者か、反体制者に限られるのが、トルコの現状のようだった。世界各国の民族問題の「本質」もそのあたりにあるのではないか。
■子だくさん、高い移民性
トルコは経済協力開発機構(OECD)加盟国で、欧州連合(EU)加盟は実現していないものの、日米欧の先進国に新興国を加えたG20の一員でもある。一方で、人口8500万人のうち17歳以下が占める割合は26%。中でもクルド人の出生率は比較的高いといわれ、少子化のトルコで人口が増え続けている。クルド人の多い南東部は子供の人口が4割を超える県もある。
そうした地域を訪ねた際、いなかにもかかわらず小学校低学年の子供たちが午後10時、11時まで公園で遊んでいる姿が目についた。大人がついていない場合もあった。子供の夜ふかしはトルコで社会問題ともなっているという。