【福原直英の福を呼ぶ馬】番組開始でいきなりレース実況をこなした小倉智昭さん
小倉智昭さんの声に初めて接したのはラジオの「日曜競馬ニッポン」でした。 「司会の小倉智昭です。どうぞよろしく」。ササっと自己紹介を済ませた後はひたすら黒子のごとく進行に徹する、そんな役割でした。 ところがある日、なんらかの理由でレースの発走時刻がずれてしまい、番組のオープニングとレースが重なってしまいました。すると小倉さんはいきなり実況を始めたのです。 「この人、実況もできるのか、しかもうまい!」。高校生の素直な感想です。 私が競馬班に入って間もないころ、小倉さんがフラッとフジテレビのブースに姿を見せました。旧知のカメラマンと親しそうに話をしていた小倉さん。その時初対面の私があいさつすると、「じゃあキミもしゃべれるでしょ」。聞けば小倉さんは学生時代から競馬が好きで実況中継を聴いていた。だから東京12チャンネル(現テレビ東京)で実況したときも、あっさりこなせたんだそう。そんなことできるわけないじゃん…新米アナの素直な感想です。 数年前にちょっとだけ小倉さんの隣で話をする機会がありました。フジテレビも受験していたという話から、「同期はどなたですか?」と伺うと「大川だよ、大川」。1990年オグリキャップの引退レースを実況した名スポーツアナウンサー、大川和彦さん。もし小倉さんが入社していたら、あのレースはどのように実況していたのでしょうか。 「とくダネ!」本番が終わると社内の書店で何冊もの本を抱えつつ、さらに書棚を探っていた背中を思い出します。ご冥福をお祈りします。(フリーアナウンサー)