元気なうちにお金は使わなきゃね!減額を承知の上で年金を「繰上げ受給」した61歳会社員だが…心の奥底から消えない不安「これで本当によかったのか」
繰下げの割合は1%台、繰上げのほうが断然多いという事実
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報」(令和3年度)によれば、繰下げ受給を選択した人は、国民年金(基礎年金のみの人)で1.8%、厚生年金では1.2%です。一方、繰上げ受給を選択した人は国民年金(基礎年金のみの人)で27.0%、厚生年金では0.6%という結果でした。 なぜ繰下げが進まないのか。その理由には、年金額が増えることにより社会保険料の負担が増加する可能性や、繰下げ期間中は年下の妻がいる間受け取れる加給年金が支給停止になる、仕事の収入を得る場合には在職老齢年金の関係で損をする可能性がある、といったこともあるでしょう。 しかし、そうしたことよりも、繰下げをして得をするためには、ある程度長生きしなくてはなりません。 「誰にも寿命はわからないので、多少金額が増えようが関係ない。もらえるようになったらきっちりもらいたい。繰下げなんて選びませんよ」 仮に70歳まで繰下げると、81歳まで生きなければ65歳から受給した時より得することはできません。また、繰下げをすれば年金を受け取るまでの期間は仕事で収入を得なければ完全な無収入になります。 また、こんな意見も聞かれます。 「繰り下げれば増額するなんて、餌で釣ろうとしてるよね。もし早く死んだら払わなくて済むから都合がいいんじゃないの」 「年金は保険だと考えるべき。もしもらえなくたって、それで普通に暮らせたら結果オーライでは?」という声もあります。多くの人がそう考えれば、長生きリスクへの対応策として、繰下げはもっと増えているでしょう。しかし数字を見る限り、そうではないようです。
「元気なうちにお金を使わなきゃ」→繰上げして大後悔も…
一方で、年金が大幅に減るという、わかりやすいデメリットがあるにも関わらず意外にも選択している人が多い繰上げ受給。 「収入が本当に少ない。身体が弱くてたくさんは働けないし、年金が減ったってもらわなければ60歳以降暮らしていけないんだよ」 このような理由で選ばざるを得ない人もいるでしょう。一方で、こんな人もいるようです。 「元気なうちにお金は使わなきゃ。家計に余裕もないし、減額を承知で繰上げ受給を決めて、受け取っていますよ。うちは代々、男は長生きしないから。後悔は…するかもしれないけど、この選択でよかったのかは、まだわからないです」 日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性は87.09歳(厚生労働省「令和4年簡易生命表」)ですが、健康年齢はそれよりもずっと低いため、身体の動くうちにお金を有効活用したいというのは理解できます。 ただし、繰上げ受給には受給額減額以外にもデメリットがあります。まず、一度繰上げの手続きをしたら取り下げできず、減額された金額をもらい続けなければならないことです。 60代のうちは仕事の収入でカバーできても、70代、80代ではそうはいかないかもしれません。その期間も減額された年金額が続きます。 手続きをしたときは「長生きしないから」「今を楽しみたいから」と思って繰上げをしたものの、あとから65歳で普通に受け取ればよかったと思っても、取り消しはできません。 また、障害基礎年金も受け取れなくなります。障害基礎年金額は1級が102万円、2級が81万6,000円(令和6年度)です。2級は老齢基礎年金と同額で、1級は1.25倍になります。繰上げをした場合、とうぜん老齢基礎年金も減額になりますので、1級の障害状態に該当した場合は、その差はとても大きくなります。 また、寡婦年金といった年金の受給権もなくなりますし、65歳までは配偶者に万一のことがあったときの遺族年金も同時受給できず、どちらかを選ぶことになります。 「やっぱり65歳から受け取るのが一番じゃないですか?」 そう思っても、65歳になる前に万が一のことがあったら…。『繰上げて後悔するのはこの世、繰下げて後悔するのはあの世』という格言がありますが、65歳時の受け取りも含めて、どれを選択するのか、そして結果としてそれが良かったのか、悪かったのかは後にならなければわかりません。 自分の資産状況、老後のプラン、健康状態……さまざまなことを考えて、ベストな選択をするしかありません。繰上げ・繰下げは人によって条件が複雑に絡み合うので、年金事務所やお金のプロに相談するなどして、慎重に決めることをおすすめします。
THE GOLD ONLINE編集部
【関連記事】
- 〈年金23万円〉〈貯金2,000万円〉元教師の80歳父の口座から「毎月10万円」引き出して悠々自適に生きる、実家暮らし「52歳・働かない息子」…銀行からのよもやの宣告に「畜生!」と激昂
- 「年金月14万円・貯金0円」の71歳父、永眠…2年ぶりに「築60年の実家」を訪れた45歳長男、トイレのなかで発見した「絶叫もののブツ」【FPの助言】
- 年金夫婦で「月28万円」もらえるはずが…同い年の夫を亡くした65歳・共働き妻、年金事務所の窓口で告げられた〈衝撃の遺族年金額〉に絶望「こんな仕打ち、ありますか?」【FPの助言】
- 年金の繰下げなんてしなきゃよかった…月13万円が18万円に増えた70代男性、安泰の老後を送れるはずが「取り返しがつかないことをした」と涙したワケ
- 絶望的すぎます…夫亡き後の年金がわずか「月6万円」に激減で窮地に。年金暮らし専業主婦を追い詰める“厳しすぎる現実”【FPの助言】