クロップ監督も打開できず…リバプール「退屈な試合」に覗いた危機
前半、5ー5のラインを敷いてドン引きしてきたウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン(WBA)に対して、リバプールは決して焦らなかった。ゆっくりと様子を伺い、縦パスやクロスでゴールを期待したボールを入れ続けた。 【動画】リバプール対WBA戦のハイライト リバプールとしては、シュートで終われずに相手ボールになることは全く問題がなかった。もしWBAがボールを持つことになれば、それがカウンターであろうとビルドアップであろうと、代名詞のゲーゲンプレスで取り返し、守備の形が整っていないうちに一気に襲いかかればいいからだ。むしろ、ひたすら11人で守られているよりも多少攻めてくれた方が好都合だ。 そんな中、12分という早い時間にサディオ・マネにゴールが生まれた。スペースが限られている中で、ジョエル・マティプからピタリと届いたボールを胸トラップして前を向き、そのままシュート。サイドからも中央からも、何度合わなくてもチーム全体で続けてきた、スペースの活用ではなく個人に点で合わせようとするプレーが実を結んだ。 このゴールによって、ここからは前に出なければならないWBAに対してリバプールがいつものようなプレーでゴールラッシュを見せる展開になるのかと思われたが、残留請負人のサム・アラダイス監督はそのまま5ー5で自陣に引きこもる選択をした。リバプールは引き続きハーフコートで試合を続けることになったが、2点目をもぎ取ることはできずに45分を終えることになった。 自慢の3トップを先発させたリバプールであっても、全員が引いて守るチームを相手にすると思うようにいかなかった。
特にモハメド・サラーがその良さを出せなかった。ディフェンダーを背負ってボールを受けても反転して突破することはできず、クロスの受け手となってもうまく合わず、と浮いてしまっていた。ロベルト・フィルミーノが左右に動いて打開を図っても、マネはフィルミーノが空けた中央のゾーンに入ってきてボールを受けようとするものの、サラーは右サイドから動いてこなかった。中央で細かく崩す場面は生まれず、攻め続けているものの単調になってしまった。 後半になると、多少攻撃の姿勢を見せたWBAだったが、あくまでも1点を目指すものだった。リバプールのクロスに対してはフィールドプレーヤーが8人もペナルティエリア内で守り、虎の子の1点を死守するかのような試合運びを見せた。 引いた相手に追加点を奪えない、という展開は、最後に1発浴びて引き分け、ということによく繋がる。この試合もそうだった。82分、WBAはコーナーキックからセミ・アジャイが決めて1-1。ユルゲン・クロップ監督は、打開する策を見せられないまま試合を終えることになった。 南野拓実がプレーする機会を与えられたとしても、その良さを出すことはできなさそうだった。デコイランで相手ディフェンダーを引っ張り、フィニッシュのためのスペースを空ける動きをするような場面は、こういう相手には訪れない。 引いた相手を中央から崩すプレーをするにはチアゴ・アルカンタラが必要だが、怪我で不在だった。しかし、1人が欠けただけで下位のチームに勝てなくなってしまっては、タイトルを勝ち取ることはできない。
今後も下位のチームは同じような戦い方をしてくるだろう。ゲーゲンプレスとショートカウンター、という流行の発信元であるクロップ監督が、選手の力ではなく戦術を進化させて打破できるのかどうか。戦術が流行すればその対抗策も広まるのは常だが、それが11人でドン引きするサッカーでは見る側は困ってしまう。 退屈な試合が増えてしまうのを防ぐためにも、クロップ監督の戦術アップデートに期待したいところだ。 ■試合結果 リバプール 1ー1 ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン ■得点 12分 サディオ・マネ 82分 セミ・アジャイ
サッカー批評編集部