【動的性能と環境性能の両立】BMW X3 xドライブ30e Mスポーツへ試乗 292psのPHEV 後編
知的なPHEVシステムと活発な電気モーター
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 車重が軽くないBMW X3 xドライブ30e Mスポーツだから、3シリーズや5シリーズのPHEV版より109psのモーターが頑張る必要はある。それでも都市部の交通へ苦労なく対応でき、優れたアクセルレスポンスと軽快なスタートダッシュで、流れをリードできる。 【写真】X3とiX3 競合SUVモデルを比較 (121枚) 市街地を抜け、ペースを速めようとするとエンジンが始動。それでも、110km/hまでは電気モーターでスルスルと加速する。もどかしい思いもない。もちろん郊外の道を飛ばせば、EVモードの航続距離、49kmには届かないけれど。 通勤時間帯を走れば、おそらくフル充電で32kmから40kmくらいが現実的な距離だろう。バッテリーは、ウォールボックスと呼ばれる家庭用充電器で、2時間半あれば80%まで充電できる。 バッテリーの残量が少なくなっても、パフォーマンスで陰りを感じることはない。バッテリーを充電しながらでの走行でも、燃費は14.2km/L程度は得られるようだ。加えて、2.0L 4気筒ターボエンジンは、高回転域でも滑らか。BMWの強みだ。 X3 xドライブ30eは、ナビのデータをもとに、エンジンを稼働させるタイミングを自ら判断している。電気モーターの利用割合が低くなる長距離ドライブでも、驚くほど燃費は伸びる。 今回は90km程度の距離を走行し、80%の充電量からスタートした。到着地点でのバッテリーは5%になっていたが、トリップコンピューターによれば、燃費は約24.8km/Lだった。
車重増による乗り心地と操縦性の変化
X3 xドライブ30eで少し期待はずれだったのは、乗り心地と操縦性。多くの人がBMWのSUVとして、充分納得できる水準にはある。だが2t近くある車重は、明らかに舗装状態の良くない路面での、フラットな姿勢制御に影響を与えている。 基本的に滑らかな路面なら、通常の固定式サスペンションでも、横方向の姿勢制御は良好。ボディサイズを考えれば評価できるハンドリングの機敏さと正確さを備えている。 通勤で乗っている限り、高いグリップと引き締まった身のこなしに、不満を感じる場面はないだろう。しかし舗装状態の悪い郊外の道を飛ばし出すと、流暢な乗り心地に陰りが見え始める。しなやかさが、不足し始める。 片側のタイヤだけに強い入力があった場合などでは、弾むような横方向の振動が発生。ダンパーの減衰力が足りていないように、ボディが揺れる傾向があるようだった。 より高い価格帯の大型SUVの場合、このような足さばきに対応できるよう、アダプティブ・サスペンションを標準で備えていることが多い。車高が高く車重も重いため、平均的なサルーンやステーションワゴンなどより、揺れが増幅されて感じるのだろう。 ただし、通常のドライバーが目くじらを立てるほどではない。積極的に運転したいと思うドライバーが、ペースを速めて気付く程度だ。