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「すべての人をハッピーな気持ちにしたい」。加藤和樹が表現者として新たに身につける芝居の極意。ミュージカル『ローマの休日』まもなく上演!

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エムオンプレス

半世紀を超えてなお、世界の映画ファンを魅了し続けるオードリー・ヘプバーン主演の映画『ローマの休日』。それを原作としたミュージカル『ローマの休日』が、2020年10月4日(日)から帝国劇場を皮切りに上演され、愛知、福岡を巡る。 とある国の王女が、ヨーロッパ歴訪の途中で立ち寄ったローマで手にした1日だけの自由な時間。そんな王女のプライベートをスクープしようとローマ観光をエスコートする新聞記者との恋が描かれる物語。 ミュージカルの初演は1998年。アン王女 役に大地真央、新聞記者のジョー・ブラッドレー 役に山口祐一郎を迎え、世界初のミュージカル化。日本発のオリジナル・ミュージカルとして話題をさらった。 今作は、アン王女 役に、朝夏まなと、土屋太鳳のダブルキャスト。ジョー・ブラッドレー 役に、加藤和樹、平方元基のダブルキャストと実力派が揃う。 そこで、加藤和樹にインタビュー。永遠に色あせない『ローマの休日』の魅力や、彼の人生の転機まで聞いた。 【詳細】加藤和樹さんの撮り下ろし写真 取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶 ◆人はどんなときも変わることができる ーー 不朽の名作、映画『ローマの休日』(1953年)のミュージカルが再び日本に蘇ります。今作に参加されるお気持ちを聞かせてください。 日本で約20年ぶりに再演される歴史ある作品ですし、まさか僕が参加できるとは思っていなかったので、本作に携わることができて光栄です。 ーー イタリアのローマを表敬訪問したアン王女が滞在先の大使館から飛び出して、偶然出会った新聞記者ジョー・ブラッドレーとの1日のロマンスが描かれますが、今でも多くのファンに愛される珠玉の物語ですね。 映画を観直すと、ロマンスとしてだけではなく、彼女の成長物語としても描かれていると思います。アン王女は自由に対する憧れを抱いて、1日だけ解き放たれてジョーと出会い、王女だろうとひとりの女性であり人間であるという当たり前の幸せを覚えて再出発を果たします。最初はスクープを狙っていた新聞記者のジョーも彼女と出会い、大きな影響を受けて変貌を遂げていく。人はどんなときも成長することができるというメッセージを感じました。 ーー 脚本を拝見したのですが、原作を忠実に描きながら、それでいてミュージカルとして成立しているので感動しました。 読むだけでワクワクしますよね。それだけでなく、実際に歌われる楽曲も素晴らしくて。稽古を経てキャストが役や歌をしっかり表現できるようになれば、脚本の面白さが必ずお客様に伝わると思います。大地真央さんと山口祐一郎さんたちの初演からインスパイアされたことを大切にしながらも、コロナ禍の現状では僕たちにできることは限られています。そのなかで、今の時代だからこそできるミュージカル『ローマの休日』の魅力をいかに引き出せるのか、みんなで模索しながら作っています。 ーー 加藤さんが演じる新聞記者のジョー・ブラッドレーの印象を教えてください。 彼は自分のことを“ヤクザなローマの特派員”と言ってしまうし、仕事も不真面目にこなしているように見えます。本来であればアメリカでジャーナリストとして成功しているはずだったから、ローマにいる現状に葛藤を覚えて、今の状況を打破したくてくすぶっている。だからこそ、仕事に身が入らないわけですが、突然スクープのチャンスに巡り合い、一発逆転、成功しようと情熱をみなぎらせる。ジョーは決して怠惰な人間ではなく、ジャーナリストとしての熱意がちゃんとあって、仕事のためならどんな犠牲も厭わないタイプだと思っていて。それと同時に、アン王女と出会うことで、スクープを手にしようと躍起になっている自分から解放されて、新たな姿を発見する人物だとも思います。 ーー それから、ジョーはアン王女の成長を見守る役割もあるかと。 そうであると同時に、彼の気持ちも変わっていきますよね。初めはジャーナリズムの信念に沿って、スクープのためにアン王女のそばにいますが、ひとりの王女として成長していく彼女の未来の妨げをしてはいけないという想いを抱くようになっていく。彼女と過ごした1日が、彼にはとても意味のあることだった。王女が自らの進む道を見つけたように、ジョーも本来のジャーナリストとしての道を見つけて未来を歩んでいく姿が想像できます。ジョーもアン王女と同じように、自らの本当のあり方に気づかされるんです。 ◆映画でジョーを演じたグレゴリー・ペックのイメージを踏襲したい ーー なるほど。ジョー自身もアン王女と同じく、新しい自分を発見する。では、役づくりで気をつけたい点はありますか。 映画でジョーを演じたグレゴリー・ペックのイメージを踏襲したいと思っています。カッコつけていないところがカッコいいお芝居というか。アン王女がジョーに自然と惹かれる魅力があるんです。アンをエスコートしていくさりげない優しさや色気が滲み出ることで、アン王女自身や観てくださるお客様にも素敵だと思っていただければ嬉しいので、それを踏まえて、ジョーの年齢はいくつで、どういう佇まいで、どのぐらいのトーンで喋るのか、相手役の方とお芝居をしながら役を作っていきたいです。 ーー たった1日の恋に落ちる瞬間を演じるうえで、心がけたい点はありますか。 恋する役を演じるうえでいつも大切にしているのは、毎回、どこで恋に落ちるかを見つけることだと思います。脚本にはストーリーが描かれていますが、キャラクターの心の変化は俳優が表現しないといけない部分なので。やっぱり、重要になってくるのは、新鮮な気持ちで恋ができるように、決め事を作らないことです。人を好きになる瞬間は、いつ好きになるのか明確にわかるときもあるし、わからないときもありますよね。その感覚をお芝居でも忘れないようにしています。僕の場合は、日々の稽古によって恋に落ちる瞬間が変わっていくほどで(笑)。今作であれば、ジョーがアン王女の何を見て、どういう行動をしたのか、どんな言葉で心を奪われたのか、それで恋に落ちる瞬間が違ってくるんです。今作はダブルキャストですから、朝夏さんや土屋さんそれぞれのお芝居で、僕の心の動きはまったく違うものになると思います。普段の稽古から、朝夏さんや土屋さんの演技を受けて、僕が彼女たちの何に惹かれるのか、どんな接し方をすれば喜んでくれるのか意識しながら、お芝居をするのを楽しんでいます。 ーー ここまでの稽古はいかがですか。 とてつもなく手応えを感じています(笑)。僕も含めて皆さんお芝居ができる喜びを感じているからですね。コロナの影響もあって、みんなで一緒に舞台を作る楽しさやありがたさを噛みしめています。僕自身も、ひとつひとつのシーンでお芝居をしているだけで充実感があって。カンパニーは完成形に向けて全力で稽古に取り組んでいて、作品に対する全員の気持ちのベクトルが同じ方向を向いていることを強く感じます。 ◆今作で苦労するのは楽曲の伝え方 ーー 我々が普段あまり使わないであろうイタリア語を駆使するシーンもありますが、お芝居をする際に、大変なところはありますか。 イタリア語の講座を受けました。日本語の音韻の中で違う言語を喋らなければいけない難しさを感じますが、身体に覚えさせれば自然に言えるはずなので、それほど苦労はないと思っています。それ以上に苦労するのは、楽曲の伝え方ですね。本作はシンプルな楽曲で、歌い上げたくなるような旋律の曲が多いんですけど、楽譜にきちんと沿いながら気持ちを乗せて歌わないと、面白みのないシーンになってしまうので、オーケストラと合わせながら、ドラマチックに説得力のある歌を届けたいと思います。 ーー 加藤さんが惹かれる曲はありますか。 一幕と二幕の終わりに歌われる「ローマの休日」です。同じ楽曲なのに、ガラッと雰囲気やメッセージが変わります。だからこそ、アン王女の成長が感じられるし、ジョーと王女の行く末も想像できる。歌うシーンが違うだけで、これほどまでに受ける印象が異なる楽曲は、なかなか見つからないでしょうね。ジョーがソロで歌う「それが人生」という曲も軽快なリズムで印象に残りますが、「ローマの休日」はアン王女とデュエットする楽曲でもあるし、一幕ではこれからどんな物語が始まっていくのかワクワクさせて、二幕で聴くと、アン王女が凛々しく去っていく姿が見えてくる……本当に泣きそうになってしまいました(笑)。 ーー (笑)。演出の山田和也さんの印象はいかがでしょう。 僕たちの意見を受け入れて自由に演じさせていただける優しい方です。現場では“みんなのお父さん”みたいに、いつもニコニコしていらっしゃって(笑)。演出家の方というのは稽古場では真ん中にいて全体を見渡すものですが、いろいろな場所からシーンを観察していらっしゃる。そんなふうに様々な角度から俯瞰でお芝居をご覧になる演出家には出会ったことがなかったので、ご一緒していると楽しいです。 ーー 山田さんからかけられて加藤さんに響いた言葉はありますか。 社会がこういう状況でもあるし、「この作品を通して、僕らだけでなくお客様もハッピーにしたい」という言葉が強く心に残っています。ミュージカル『ローマの休日』を上演するだけでは終わらせたくないという気持ちを感じます。僕らも、お芝居で作品のメッセージを届けるだけではなくて、皆さんがハッピーな気持ちになってもらえるように頑張りたいです。 ーー お話を伺っていると座組みはポジティブなフィーリングに満ちているんですね。 そうです。キャストやスタッフの、今作にかける想いがみなぎっている雰囲気の良いカンパニーで、みんなの心がひとつになっているのを感じます。もちろん、どの作品も同じ気持ちで臨んでいるのですが、今作はコロナによる自粛期間があって、舞台がなくなったときのつらさをみんなが経験しているから、想いがより一層強まっているんだと思います。 ーー 加藤さんが考える本作のポイントはありますか。 突き詰めれば、アン王女とジョーのわずか1日のお話でもあるのですが、人が成長するための時間は、長ければいいわけでもなくて、誰と出会って、どういう時間を過ごすのかが重要だと教えてくれます。アン王女はジョーと出会って濃密な時間を過ごさなければ、王女としての自覚を持たなかったかもしれない。それは現実を生きている僕らの世界でも一緒。尊敬する人に巡り会い、その人の影響で生き方があっという間に変わってしまうことがある。僕が音楽に出会って人生が変化したように、時間ではなく、出会いがすべてだと思います。 ーー 加藤さんもジョーやアン王女のような人生が変わる瞬間があった。 ありましたね。僕は18歳で上京して、自分の生き方を模索していた時期に、“ザ・ベイビースターズ”の「去りゆく君へ」という曲を聴いて音楽を始めたいと思ったのが転機でした。 ーー 加藤さんはミュージシャンであることも俳優と同様に大切にされていますね。 自分の楽曲を歌うと、いまだに気づかされることがあります。音楽を始めたばかりの初心を思い出して、勇気をもらえるきっかけになるというか。歌詞を書くときには自分自身に言い聞かせるつもりで、僕が誰かに何かを与える感覚ではなくて、みんなで同じ気持ちを共有しようと心がけています。ひとりよがりにならないで、皆さんがつらい状況にいても、僕と一緒に前を向いて進んでいこうと歌うことができなければ、お客様に気持ちが伝わらないと思っているので。 ◆ミュージカルは役の気持ちを伝え、アーティストとしては僕の気持ちを伝える ーー たしかに、そんな加藤さんの心持ちがあるから、先日の無観客配信ライブ「Kazuki Kato Acoustic Live “KK-station 2020” Livestream -Live positively-」も感動的だったと思います。ちなみに、加藤さんには、ミュージカルとミュージシャンとしての歌い方、心のあり方の違いはありますか。 ミュージカルは役の気持ちを伝え、アーティストとしては僕の気持ちを伝えようとします。先日の無観客配信ライブで久しぶりに歌を歌ったときは、ミュージシャンとして、僕の言葉を歌として届けたい気持ちが思わず溢れすぎてしまって(笑)。俳優やミュージシャンとしても僕の心から溢れる感情を歌うのですが、ミュージカルの場合はあくまで役になり切って、演じているシーンで曲の魅力を最大限に伝えようとします。 ーー 俳優としての加藤さんはいかがでしょう。作品を拝見するごとに卓抜なお芝居になっている気がします。 ありがとうございます。作品ごとに演じる役が変わるわけで、キャラクターの醸し出す空気や声質、性格さえ自然と移行するので、僕からお芝居を変えようとする意識はないんです。今作のジョーに限ったことではなく、ミュージカル『フランケンシュタイン』(17、20)のアンリ・デュプレや、ミュージカル『怪人と探偵』(19)の明智小五郎など様々な役を演じることで、俳優として変化していると思います。 ーー 俳優・加藤和樹はつねに成長していくんですね。 今作はコロナ禍での作品ということもあって、俳優としてよりも、もっと根本的な“表現者”としてどういう成長を遂げられるのかが問われていると思います。僕にとってミュージカル『ローマの休日』は、相手と対面するときに近寄っては喋れないといった制約のある状態で、自分の新たな表現を提示する初めての作品になります。僕には大きな挑戦ですし、コロナが収束するまではこれまでとは違う表現の仕方で、それがお客様に違和感なく、お芝居として成立させないといけない。いままでの概念にはない新たな表現が身につく気がしています。 ◆お客様をハッピーな気持ちにする舞台にしたい ーー それでは、最後に見どころをお願いいたします。 日本で久しぶりに再演されるミュージカル『ローマの休日』、映画ファンも非常に多い作品で、何よりこの時代に上演できることを嬉しく思っています。今作を心待ちにしているお客様をハッピーな気持ちにする舞台にしたいと思っているので、ぜひ劇場にいらしてください。 「すべての人をハッピーな気持ちにしたい」。加藤和樹が表現者として新たに身につける芝居の極意。ミュージカル『ローマの休日』まもなく上演!は、WHAT's IN? tokyoへ。

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