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【出口治明】知の巨人が語った、コロナ時代を生き抜く方法

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webマガジン mi-mollet

緊急事態宣言が全国で解除されました。 新型コロナウイルスは社会の変化を押し進めていますが、緊急事態宣言の解除を受けて、この変化は速度を上げ、社会は「新しい世界」へと向かうのか。それとも、次第に元の社会へと戻っていくのか。 先行き不透明な状況を乗り越える心構えと、このタイミングでこそ、読むべき本について、ライフネット生命創業者で読書家の教養人として名高い、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長に聞きました。 いわば、「コロナ時代をよりよく過ごすための公開講演」。全三回でお送りし、三日連続で公開します。第二回は明日公開予定です。 コロナ流行はいつ終わる?前線の医師が語る「収束までの3つのシナリオ」  

パンデミックは、必ず終わる

まず、はじめに僕がお伝えしたいことは、新型コロナウイルスによるパンデミックは、必ず終わるということです。 シンプルに考えてみてください。ウイルスによるパンデミックは自然災害です。我々ホモ・サピエンスは地球に姿を現してからまだ20万年程度ですが、ウイルスはそのはるか昔から地球上に存在しています。人類と未知のウイルスがたまたま遭遇して生じる自然災害(パンデミック)は、過去にも一定周期で起こっていることです。 今私たちが置かれている「コロナ・パンデミック」は、例えるなら、巨大な台風に出くわしたようなもの。今、目の前では荒れくるっていても、必ず終わりが来るのです。 ですから、私たちに今必要なのは、「いつ終わるのか?」と不安になることではなく、パンデミックが終わるまで「いかに犠牲を少なくして、課題に立ち向かうのか」ということだと思います。

コロナショックを乗り越えるための三つの課題

私たちは今、世界共通の課題に直面しています。 世界共通の「三つの課題」を、社会も指導者も、同じくつきつけられているのです。 一つ目の課題は、まだワクチンも薬もない以上、私たちができることはひとつしかありません。それはなるべく人との接触を減らして、犠牲を少なくすることです。 ウイルスは、ひとりでは動き回れません。ウイルスの乗り物は人間です。そしてウイルス同士では情報のやりとりもできません。 でも、私たちは違います。私たちは家に居ながらでも情報をやりとりすることができます。家にいながら、例えばSNSやメディアを通じ、本を通じ、情報や知識を得て考えることができるのです。できるだけ人との接触を減らしながらできることをやっていく。ワクチンや薬が見つかるまで、外出は必要最低限にしてウイルスを拡げていかないことだけが、現在の私たちにできる唯一のことなのです。 二つ目の課題は、エッセンシャルワーカーへの感謝と支援です。 医療従事者やスーパー・小売店の従業員、物流を担う皆さんなど、現場で働くエッセンシャルワーカーがいなければ、ステイホームは不可能です。 エッセンシャルワーカーが働いてくれるからこそ、多くの人がステイホームでも、生活できたのです。そのようなエッセンシャルワーカーに対して、いかに感謝を伝え、支援をしていくかを社会全体で考えなければなりません。 例えば、フランスでは、毎晩20時にアパートのベランダに出て、医療従事者などへの拍手を行う習慣がすっかり定着しています。これは市民によるSNS上での呼びかけから始まったもので、その動きはマクロン大統領が封鎖を宣言したわずか1時間後に起こっているのです。社会の成熟度が伝わる事例ですよね。 逆に、例えば医療従事者の子どもが保育施設から登園拒否を受けるなどといった差別は、ほんとうに悲しいことです。社会の未熟さが吹き出ている事例だといえるでしょう。 三つ目の課題は、収入減への対応です。 ステイホームは収入減を意味します。収入減で真っ先に痛みをこうむるのは、時間給で働くパートタイムやアルバイトの皆さんです。ステイホーム期間に減った就労時間の分だけ、収入はいやが応でも減ってしまっています。またフリーランスで働く皆さんも、世の中から仕事の案件自体が減っていくため、同じく収入減になります。 ですから、こういった社会的弱者への緊急の所得再配分政策をスピーディに設計して、実行しなければならないのです。ステイホームは、繰り返しになりますが、社会全体の収入減を意味します。社会全体でまず意識してほしいのは、「社会全体の収入は減っても仕方がない」ということ。収入が減っているのは、自分だけではないのです。自分だけではなく、ほとんど全員が、このコロナショックで収入減に直面しているということです。みんなが苦しんでいるからこそ、互いを思いやる気持ちが何よりも重要です。 繰り返しますが、パンデミックは必ず終わります。「超巨大な台風が来ている最中」なのですから、いたずらに不安に沈むのではなく、今は静かに台風が過ぎ去るのを待ちましょう。仕事や外出が減ったことによって生まれた時間を別のことにあて、パンデミックがあけた時に備えるという心づもりで、普段は読めなかった分厚い本を開いてみたり、自分の能力を磨くことをおすすめします。 「コロナショックによる消費の冷え込みに対して、消費税を0%に」などという声も聞きますが、現実を直視しない暴論の類だと思います。ステイホーム=収入減なので、今すぐに必要な政策は、社会的弱者に対する現金や食料の給付です。問題の本質を見極める判断能力や対応を迅速に行う実行能力が、世界中の指導者に対して求められているのです。 さらに、指導者の対応振りは、今の時代、世界中で同時に見られています。例えば、アメリカであれば、トランプ大統領とニューヨーク州のクオモ知事の対応がたびたび比較されています。各国の対応はすべて全世界の市民の目にさらされているのです。 もちろん、それは日本という国でも、各都道府県でも同じこと。今回のコロナショックで、指導者の対応力が浮き彫りになったといえるでしょう。その意味で、コロナショックを経て、国民の政治への関心は高まるだろうと予測しています。

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