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日本の名画『東京物語』からはじまる小津の世界【米倉涼子のシネマコレクション】

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米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。 そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。 【写真】米倉涼子のプライベートの食生活 みなさんは、日本の古い映画はよくご覧になりますか? 私はこれまであまり積極的に日本の名画と呼ばれるものに触れてこなかったというのが、正直なところです。 今回紹介する小津安二郎監督の『東京物語』も、おすすめされつつも観るきっかけを逃していた作品。山田洋次監督が『東京物語』をモチーフにして舞台を現代に置きかえて撮った『東京家族』を観たのをきっかけに、1953年に製作された『東京物語』と観くらべてみました。  家族構成は少し変わっていますが、どちらも田舎に住む両親が東京の子どもたちの家を訪ねるところから、物語がはじまります。郊外で開業医をしている長男の家も、美容院を営む長女の家もそれぞれに忙しく、両親を東京観光に連れて行くのもままなりません。 核家族化は、小津監督の時代からはじまっていたんですね。親を大事に思う気持ちはあるけど、忙しくて相手ができないことを理由に、家には泊めずに宿泊先を用意したり、手持ち無沙汰で早く帰ってきたふたりにイラ立ったり。血がつながっているからこその甘えや怠慢、面倒くささは、時代を超えても変わらないものなんだなぁと、この2本を観て思いました。 『東京家族』では両親が出かける先が熱海の旅館から横浜のホテルに変わっていたり、酔っ払いの団体ではなくて中国人観光客が騒がしかったりと、現代が舞台ならではの変更点もおもしろかった。ふたりが何をするでもなくベッドに腰かけて、観覧車が回る夜景を眺めているシーンは、胸 にグッときました。 気がついたのは、同じような構図やセリフが登場するのに、“間”がまったく違うこと! 両親がやってくる日、「今日はすきやきでいいわよね」と家族が集まるシーンも構図はほぼ一緒なのに、テンポが違うからか異なる印象になっているんですよね。『東京物語』の原節子さんの話し方はすごくゆっくりで、最初はそのスピードに「遅っ!」と、びっくりしました(笑)。 当時は今よりも忙しくない時間が流れていたということなのかな。今なら1.5倍速で観るとちょうどいいくらいのリズムが、とても優雅に感じられました。『東京家族』で吉行和子さんが演じている母親は、まだ60代という設定。DVDを母と一緒に観たのですが、「今の60代はもっと元気よね」と感じたみたい。 私のほうは、蒼井優さん演じる、舞台美術の仕事をしている次男のガールフレンドがとても素敵な娘さんで、「こんないい子、現代にいるかしら!?」という感想を持ちました。“今の家族”を描いている作品ですが、そのあたりには、『東京物語』の影響が出ているのかもしれませんね。 そうそう、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』でご一緒した伊東四朗さんと岸部一徳さんに『東京物語』を観たことを話したら、お好きな小津作品について教えてくださったんです。 昔の名画を観ることは、こういうコミュニケーションにもつながるんだなぁって、うれしくなっちゃいました。おふたりのおすすめの『秋刀魚の味』や『麦秋』、今後観たいと思っています。 『東京物語』 広島の尾道から東京の子どもたちを訪ねる老夫婦。忙しい子どもたちに邪険にされるなか、ふたりに優しく接してくれたのは、戦死した息子の未亡人だった。世界中で愛され、2012年には世界の映画監督が選ぶ優れた映画第1位に選ばれた名作。出演に笠智衆、原節子。 『東京家族』 映画監督生活50周年を機に、山田洋次監 督が小津安二郎監督の名作『東京物語』にオマージュを捧げた作品。2012年の東京を舞台に、子どもたちに会うためにやってきた老夫婦の姿を通して、家族の絆とは何かを描き出す。老夫婦に橋爪功と吉行和子、長女を中島朋子、次男を妻夫木聡が演じている。 取材・文/細谷美香 このページは、女性誌「FRaU」(2013年)に掲載された 「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。 

米倉 涼子

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