豊田章男「このままではビジネスモデルが崩壊」――政府に抜本的なエネルギー政策の転換を求めたワケ
■日本のエコカーはCO2まみれ?
日本の発電割合はCO2を出す火力発電が77%、CO2を出さない再生エネルギーや原子力が23%。(資源エネルギー庁「エネルギー需給実績(確報)」2018年度) 一方、フランスは、火力発電8%、再エネ・原子力91%。(国際エネルギー機関IEA 2019年) この状況で、まったく同じ車を日本の工場とフランスの工場でそれぞれ製造した場合、豊田氏は、「カーボンニュートラルで考えるとフランスで作っている車の方が(CO2を出さずに作った)いいクルマとなり、日本ではこの車は作れないということになる。」と訴える。 日本が発電におけるCO2対策をしない場合、自動車の生産拠点はCO2を排出しない発電方法が主力となっている他国に移り「自動車産業のビジネスモデルが崩壊してしまう恐れがある」と危惧する。
■自動車業界のビジネスモデルは崩壊するのか
自動車業界は走行時のCO2排出量を減らすため、各自動車メーカーは「電動車」の開発と製造に力を入れている。 「電動車」には大きく分けて4種類あり、ガソリンエンジンとモーターで動くハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、バッテリーの電気でモーターを動かす電気自動車(EV)、そして水素などを燃料に発電してモーターを動かす燃料電池車(FCV)に分けられる。 豊田氏は2030年半ばまでに政府が「ガソリン車廃止」を検討していることを念頭に、「理解が少ない政治家の方々がガソリン車さえなくせばいいんだろう」という考えはガソリンを全く使わないEVに全て変わることがカーボンニュートラル実現の近道だとのミスリードになると牽制した。 「国内にある乗用車400万台が全てEV車になった場合は、夏の電力使用のピークの時に、電力不足に陥る。」として、「発電能力をプラス10~15%増やさないといけません。これは原発でプラス10基、火力発電であればプラス20が必要な規模ですよ、ということをご理解いただきたい」と豊田氏は主張した。 そこで日本では、カーボンニュートラルへの過渡期においては、急速なEV化ではなく、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料自動車)、EV(電気自動車)のフルラインナップで、目標を達成することが「日本の生きる道」だと強調した。 また、トヨタ自動車は、部品メーカーに対して、EV技術の開発促進や支援を行ってはいるが、EV化が急速に進むことで、ハイブリッド車の部品を開発しているメーカーなどの仕事がいきなり無くなってしまい、雇用が守れなくなる恐れもある。2050年のカーボンニュートラルを前に自動車業界は100年に1度の変革期を迎えている。