豊田章男「このままではビジネスモデルが崩壊」――政府に抜本的なエネルギー政策の転換を求めたワケ
「カーボンニュートラル2050と言われるんですが、これは国家のエネルギー政策の“大変革”なしにはなかなかですね、達成は難しいということをぜひともご理解いただきたいと思います。」 自動車会社の業界団体である「日本自動車工業会」の会長をつとめるトヨタ自動車の豊田章男社長が記者団に対し強い口調で語った。 自動車の業界団体トップが「自動車業界の努力だけでは“カーボンニュートラル”は実現できない」と政府に対して理解を求めたのだ。
■今はまだ”カーボン12億トン”
政府が進めるカーボンニュートラルは、二酸化炭素(CO2)の国内排出量をプラス、森林などによる国内吸収量をマイナスとしたときに、その合計をプラスマイナスゼロにする取り組みだ。 カーボンニュートラルを実現するためには、CO2の排出量を減らし吸収量を増やす必要がある。しかし、環境省が発表しているデータによれば、2018年度(確報値)のCO2の総排出量は12億4000万トン、吸収量は5590万トンで、差し引くと、CO2はおよそ12億トンのプラスだった。 国土が狭い日本では森林植樹による吸収量の大幅な増加が見込めない以上、「カーボンニュートラル」実現のためには排出量を減らさなければならない。
■自動車の排気ガスより深刻な発電
では、自動車はどれくらいCO2を排出しているのか。 乗用車やトラックなどのCO2排出量は2018年度でおよそ1億8000万トン。(「運輸部門」の排出量のうち、航空や海運を除いたもの)これは総排出量の15%ほどで、部門別で見ると3番目になる。 一番多くCO2を排出している部門は、発電所や製油所など「エネルギー転換部門」の4億5600万トンでこれは全体の約40%にあたる。2番目は、工場などの「産業部門」で2億8500万トン。 カーボンニュートラルを実現するためには「エネルギー転換部門」にある石炭や石油を燃やす火力発電から、再生エネルギーなどCO2を排出しない発電方法に切り替えることが必要なのだ。