人手不足の切り札は「着る筋肉」 8000台、22億円超…拡大続けるアシストスーツ市場
ダイヤ工業は1980年代に医療機器分野に参入し、コルセットやサポーターをベースにアシストスーツ開発を始めた。
現在はベンチャーから大手までさまざまな企業が開発に乗り出し、市場は拡大を続けている。
日本能率協会総合研究所の調査によると、令和5年度の国内のアシストスーツ市場は約8千台。矢野経済研究所が3年に行った調査では、市場規模は同年度に22億円を超え、その後拡大傾向をたどると予想されている。
池田さんは顧客ニーズについて「労災を防ぐ」という労働安全・安全衛生の観点と、建築土木業系や介護系、倉庫・運送業系では人手不足対策を挙げる。「労働人口減少対策では、新たに人を雇うか、今いる人に長く働いてもらうかの選択となる。(アシストスーツの開発は)健康体で長く働いてもらえるニーズを意識している」という。
■見えてきた課題
展示会来場者の声から課題も見えてきた。その一つがパワー不足だ。
社員の1人が腰痛になったため急遽(きゅうきょ)、展示会を訪れたという広島県福山市のLPガス販売・住宅設備機器メンテナンス会社の籔田健一社長(49)は「実際に着けてみると、作業をする際に邪魔にならないことや、動きやすさが重要だと分かった」と装着感には満足した様子。一方で、「ガスコンロが多機能化して重くなり交換に2人必要になったので、スーツ導入で1人に戻せないかと思ったが、今すぐには難しそうだ」と明かした。
作業服販売業の男性も「筋力をあまり使わずに物が持てるというイメージが強く、少しギャップを感じた」と漏らした。
それでも、池田さんは「パワーアップへの強いニーズ、サイズ展開の少なさ、夏の酷暑対策、作業服との一体化、ファッション性・アパレル化など、技術的な課題がつかめた」と前向きだ。「日常生活も含め、さまざまな困り事の解決策としての可能性を広げたい」
ダイヤ工業広報部門の藤原舞利子さん(37)も「来場者のアンケートでは満足度が高く、認知度を上げられれば、成長につなげられるはず」と手応えを感じていた。(和田基宏)