田代万里生が語る、ミュージカル俳優 への「転機」恥ずかしいほど “ロマンチック”な次回作への思いも
『レ・ミゼラブル』よりビッグな作品が生まれるかも
――オペラとミュージカル。それぞれのどんなところがお好きですか? オペラは原語で歌うので日本で観る場合は字幕や音として楽しむことが多いんですが、ミュージカルは各国の母国語でダイレクトにお芝居や台詞、歌を楽しむことができます。 また、ミュージカルは、その時代をすごく反映しているのに対して、オペラの定番で上演されている作品は新しくても100年くらい前で、さらに古いモーツァルトの時代だと250年くらい前になってしまいます。いわゆる古典の作品が現在もスタンダードとして上演されていて、2000年以降の新作のオペラは一度上演されてもなかなか再演されない状況が多いと思います。 一方でミュージカルは毎年新作が生まれてトニー賞などで評価された作品が各国で再演されることもありますが、オペラにくらべるとまだまだ創成期ですね。でもこれから『レ・ミゼラブル』や『オペラ座の怪人』よりも、もっとビッグな作品が生まれるかもしれません。 古典のミュージカルを演じるのもすごく楽しいですし、今後新しく誕生した作品を日本のオリジナルキャストで演じることなどを考えると、ミュージカルのこれからがすごく楽しみです。そういう喜びがミュージカルにはあると思うので好きですね。
“これって恋なのかしら”と展開していく王道ストーリー
――今回ご出演される『モダン・ミリー』や、田代さんが演じるジミー・スミスにはどんな印象をお持ちですか? 映画でミリーを演じているジュリー・アンドリュースがもちろん素敵ですし、もっと知名度が上がってもいい作品なのではないかと思いました。今回は台本に手が入って、新しい楽曲も加わるのでリニューアル版として世界初演のような形で上演されるのですが、作品が誕生した時代では当たり前だったことも、現代には適していないことがあるから書き換えたことを伺って、合点がいきました。 ミリーとジミーの出会いは最悪で、それがだんだん“これって恋なのかしら”と展開していくというブロードウェイミュージカルの王道ストーリーで、恥ずかしくなるくらいロマンチックなシーンもあります(笑)。 役に関してはまだ立ち稽古を2回やったくらいなので探っている最中ですが、ジミーには固定観念とか理想というものがあって、ミリーと出会うことでその理想がどんどん変わっていくんです。ミリーはジミーの正体を知らないので先入観なくズカズカと接していくことが、ジミーは嬉しかったのでしょう。その揺らぎをしっかりと押さえつつ、この王道の作品をしっかりと届けたいと思っています。 ――『モダン・ミリー』に出演する上で、何か準備されたことはありますか? 禁酒法が施行されていた1920年代のニューヨークを舞台にした作品なので、僕がこれまでに出演した『ボニー&クライド』『エニシング・ゴーズ』『グレート・ギャツビー』『ガイズ&ドールズ』などでやってきた経験が、本作に生かせるだろうと思うところはたくさんあります。 当時は新しいファッション、新しい音楽、新しい文化が生まれた時代なのでとても魅力的ですし、狂騒の20年代と呼ばれる「ジャズ・エイジ」の音楽はたくさん聴いています。その時の空気感などを思い出すことができるので、これらの作品をやってきて良かったなと思います。 ――作品の舞台でもあるニューヨークへの旅行にはどんな思い出がありますか? 僕はニューヨークにはデビュー当時に1回しか行ったことがなくて、そのときミュージカルは『メリー・ポピンズ』や『ネクスト・トゥ・ノーマル』を観ましたが、一番記憶にあるのは、メトロポリタン劇場で上演されたフランコ・ゼフィレッリ演出の『トゥーランドット』。 おそらく何億円もかかっていると思われる壮大なセット、何百人もの群衆として出てくる出演者などを観ることができて、とても嬉しかったです。当時は僕自身、ミュージカル俳優としてブロードウェイに行ったという意識はないので、今度ブロードウェイに行ったら全然違う視点でミュージカルを観ることになるのだろうなと思います。