ライバルではなく、夢を追う仲間「NiziU」がギスギスしていないワケ
表も裏も“包み隠さず”披露する
それは、洗練されたパフォーマンスとは対照的な「等身大の素顔」をも放送したことと関係があるようです。 例えば、もともとJYPエンターテインメントの練習生として韓国に渡っていたミイヒ(16歳)。 グローバル地域予選で通過を告げられた際、「お母さんに会いたいときもいっぱいあったけど、辛いことを乗り越えたらこんなにいいことがあるんだ」と涙を浮かべるシーンが。堂々とした歌唱をこなす未来のスターから、等身大の当時14歳の少女に戻った瞬間を見せていました。 また、宿舎で家族からのビデオメッセージを見るメンバーの姿も放送。家族の顔を見た途端に泣きじゃくる少女たち。ステージでは堂々としたパフォーマンスを見せているのにも関わらず、裏側では等身大の少女の姿をのぞかせています。 このような部分が見えるからこそ、彼女たちは視聴者に親近感を抱かせ、応援したいと思わせるのではないでしょうか。
ライバルではなく、まるで「姉妹」
「オーディション番組」というと、どのような様子を思い浮かべますか? 選ばれる、選ばれないを決めるという意味では、AKB48グループの「選抜総選挙」などを連想する人もいるかもしれません。バチバチとした対抗意識や、殺伐とした雰囲気を思い浮かべる人も、なかにはいるでしょう。 しかしNizi Projectの選考過程を振り返ると、そうしたイメージとは対極的なムードがありました。あえて言葉にするなら「優しさ」という表現が似合います。ここに、ふたつめの要因があるように感じます。 もちろんNizi Projectにも熾烈(しれつ)な争いはありました。個人の順位を競う合うという仕組みも、AKBグループと似ています。
その場を包む空気の名は「優しさ」
しかし、他のメンバーがステージに立つ前には「頑張れ」と声をかけて緊張をほぐしてあげ、ステージに上がる姿を見つめながら祈るような視線を送る。 ライバル関係であるにも関わらず、本心から「うまくいってほしい」と思っているような彼女たちの姿は、端から見たら不思議にも思えます。 しかし、彼女たちのなかには、「他人を蹴落とすよりも自分が成長しよう」という空気感がありました。 約6か月間に渡る最終審査が行われたのは、韓国。異国の地で生活をするだけでも不安な中、さらにメンバー選考という重圧がのしかかります。 親元を離れて日本から出てきた少女たちの間には、そんなストレスフルな日々をともに支え合う相互関係が生まれたのかもしれません。だからこそ、仲間の成功を心から祈れるのでしょう。 「ライバル」ではなく、ともに夢を追う「仲間」。プロジェクト全体に通底するそんなムードを体現するシーンも数多く見受けられました。 例えば最年長のマコ(19歳)が、メンバーに手料理を披露しながら話を聞いてあげる場面。年上のメンバーが年下のメンバーを心配そうに見つめたりアドバイスを送ったりする姿は、まるで本当の「姉妹」のように視聴者の目には映りました。 新型コロナウイルス禍でどこか殺伐とした空気が世間を覆う中、Nizi Projectは忘れかけていた「優しさ」を思い出させてくれる存在だったのかもしれません。