“特徴・肥満体型”“女児の危険行為を注意”…「不審者情報」の奇抜な言動・行動を“ネタ”扱いすべきではないワケ
不審者情報が公表される基準は?
不審者情報をどのような基準で「注意喚起が必要」などと判断し公表しているかは、警察や自治体ごとに異なる。 全国の「不審者の出没情報」を収集・配信している「日本不審者情報センター」代表の佐藤裕一氏によると、公表された不審者情報のなかには、後日になって「事件性はなかった」「知人による声かけだった」などと判明するケースもあるという。 「ただし、ある不審者情報が、後日に『実際には危険がなかった』と判明しても、それは結果的なものでしかありません。 被疑者の逮捕後に初めて『同地域では以前から子どもを狙ったわいせつ事件が複数件あった』などの情報が出る事態のほうが、地域とっての危険が高いでしょう。 また、子どもに対する事案に関しては、一見問題のなさそうな声かけであっても、それを親や学校に伝えるに至った子どもの直感は無視できないとも考えます」(佐藤氏) 基本的には、「水筒」事案のように警察が公表したメールには書かれていない問題が潜んでいる可能性をふまえて、一見問題のなさそうな事案でも警察や自治体が公表した不審者情報には「警戒すべき何かがあったのだろう」と判断することが適切だ。 また、佐藤氏は「近隣を含めた地域一帯で、同種の事案が2回発生したら、とくに注意したほうがよい」と、普段から安全情報をこまめに確認することの重要性を語った。
不審者情報の流れとメディアの役割
インターネット上の「まとめサイト」には「不審者セリフクイズしようぜwwwwww」などのタイトルが付けられた、不審者情報を面白がる記事も多い。 そもそも不審者情報には奇抜な言動が含まれる場合が多いため、「ネタ」として面白がられることは避けられない面がある。 「人権侵害や、地域の平穏な日常生活に支障を生じさせるなど、被害が起きた事案を『ネタ』にする風潮は好ましいことではありません。 一方で、奇抜な言動がまったく『ネタ』にされない浄化された社会であったとしたら、そのことにも不安を感じます」(佐藤氏) メディアも不審者情報を発信する際には、奇抜な事案をことさらに選んで「面白い話」として伝えないように注意する必要がある。 また、「水筒」事案のように、不審者情報の詳細や続報を取材して、警察や自治体のメールだけでは伝わらない実態を明らかにすることもメディアの役割だ。 「不審者情報の流れには、(1)子どもが親や学校に報告する、(2)親や学校が警察に報告する、(3)警察が住民に報告する、という段階があります。『水筒』事案では、(4)メディアの取材報告が加わりました。関係者のそれぞれが、やるべきことをやった、といえます。 そして、最後に、欠けていることがまだ多いのが(5)事案解決の報告です。事件性があった場合となかった場合のどちらにせよ、詳細な情報があることで、地域住民の警戒感の緩和につながると考えているためです。 とくに、事件性のなかった場合の解決情報は『危ない不審者はいなかった』と地域住民を安心させるのみならず、公表された行為者の名誉回復になることからも、とても重要だと思っています」(佐藤氏)
弁護士JP編集部