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【論説】英国の欧州議会選挙、合意なき離脱に「ノー」

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The Guardian

【ガーディアン論説委員】  最も予期せぬ選挙が、最も予期せぬ結果をもたらした。多くの人が起こるとは思っていなかったし、起こってほしくなかった。2019年の欧州議会選挙の結果は、英国が現代史上、最も政治的に不安定な時期にあることを証明するものかもしれない。  今回の選挙は2大政党(保守党と労働党)の基本的な独占を灰にし、成功を収めた小政党の自信に火をつけた。選挙の遺産は複雑だ。従来の単純小選挙区制の視点から見ると、今回の英国の選挙は、ナイジェル・ファラージ氏というお飾りの党首を担ぐブレグジット党の勝利として描かれる。結成間もない同党にマニフェストはなく、欧州連合(EU)からの合意なき離脱を唯一の政策としている。どこからか32%の票を獲得し、欧州議会で英国に割り振られている73議席のうち29議席を得た。  これを過小評価してはいけない。ブレグジット党の躍進、そしてそれを勢いづけた国民の怒りは本物だ。だが、過大評価してもいけない。これがすべてではないからだ。全体を見れば、反EU派の政党は低迷している。今回の選挙で、ブレグジット党と英独立党、保守党の合計得票率は43%だった。これは、英独立党と保守党の得票率が計51%を記録した2014年の前回選挙と比べ、大幅に低い。さらに、離脱派だけではなく、残留派までもが怒りの声を上げた。及び腰の老舗政党に見切りをつけ、離脱派ではなく残留派に投票する有権者が増えたのだ。英国からは、反EU派より親EU派の方が多く議席につくことになる。全体を見ると、EU残留派が一貫して多数派であることを、今回の欧州議会選は映し出した。  親EU派の有権者は自由民主党や緑の党、スコットランド民族党、ウェールズ民族党、それに選挙結果は振るわなかったもののチェンジUKといった新たな勢力に投票した。この選挙結果は、国民はただ政府にブレグジットを実現してほしいだけで、必要であれば合意がなくても強行突破でも構わないと考えている、との右派の主張を完全に打ち砕くものだ。真実は、そのような有権者はかろうじて3分の1に届く程度で、残りの3分の2近くは反対の投票をした。選挙結果は、国民が合意なき離脱を求め大騒ぎしているという主張と矛盾している。  これに異を唱える人たちは、容赦ないとがめを受けるべきだ。ファラージ氏だけではなく、保守党党首の辞任を表明したテリーザ・メイ首相の後任を狙っている人たちの多くや、同様の愚かな主張を繰り広げている人たちもだ。一連の選挙結果は、保守党とブレグジット失敗に対するすさまじい非難だ。考えてもみてほしい。英国史上最も関心が持たれた(初めて投票率が上昇した)欧州議会選挙で、ブレグジットを実現しようとしている政権与党が有権者10人に1人の支持も得られなかったのだ。今回の選挙で、メイ氏の後任が英国とEUとの溝を一層深める信任を与えられたと装うのであれば、それは暴挙だ。  だが、労働党も何の信任も得ていない。最大野党の労働党は与党・保守党ほど結果は悪くなかったものの、得票率14%では大差はないし、新たな底も見えてくる。選挙結果は、保守党が直面している存続の危機とほぼ同じ状況を労働党に突き付けている。一方、自由民主党は明確に親EU的なメッセージを発信し、初めて労働党を打ち破った。さらに緑の党はもう少しで労働党を得票率4位に落とすところだった。ロンドンで大敗して得票率2位となり、スコットランドでは得票率わずか9%しか獲得できなかった労働党にとって、下院で過半数を獲得するという望みはさらに薄くなった。  昔ながらの2大政党による政治が多元的な政治へと分解される図式は、英国に限ったことではない。欧州議会選挙が行われた加盟国27か国のいくつかでも同様の傾向が強く見られた。それらの国では英国同様、緑の党と左派政党が一方から、排外主義を掲げる政党がもう一方から覇権を持つ古い勢力に対抗した。その結果、2大政党制を破壊するには至らなかったものの、弱体化に成功した。そういった意味でも、他にもいろいろあるが、英国は欧州の一部なのだ。【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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