28歳で借金2億、大赤字アパート相続「何で俺ばっかりこんな目に…」 地方の不動産賃貸会社、地獄のスタート ~山長・前編
◆不動産会社に殴り込み!?
――アパート経営は改善しましたか? なかなか集客がうまくいかず、家賃収入は伸びませんでした。 私は、そのことをすべて不動産管理会社や不動産仲介会社のせいにしていました。 あるとき、営業中の仲介会社に乗り込んで、お客さんがいる前で店長を罵倒しました。 今では、地元の不動産業界で有名な話になっています。 当時は“瞬間湯かし器”でした。 もちろん今はそんなことは一切しません。 昔の長田穣と今の長田穣はまるで別人です(笑)。
◆ごみ置き場にごみが堆積して、まるで“ミルフィーユ”
――どうやって事業を回復させたんですか? 2010年、物件の無料点検を受けてみました。 その結果、外壁が劣化し、緊急で修繕が必要でした。 といってもお金がありません。 当時、月に1回、清掃業務を外部業者に月4万円で委託していたのを解約し、修繕費に充てることにしました。 入居者から家賃のほかに共益費をもらっているので、最低でも月1回は掃除しなければならないのです。 じゃあ自分がやるしかない。 自分でアパートの掃除を始めました。 ――それまで掃除をしたことがありましたか? ありません。 自宅の掃除もろくにやっていませんでした。 アパートの掃除をやり始めた当初、ごみ置き場を見てみたら、ごみが堆積して層になり、まるでミルフィーユでした。 こんなアパートじゃ誰も住まないと思いました。 最初は月1回、嫌々ながら掃除していました。 ところが、月1回の掃除でけっこうごみがたまります。 夏場なら、共用灯に集まった虫の死骸が共用廊下にたまるんです。 それをきれいにすると、自分の心まできれいになっていく気がしました。 ちょっと自分で言うのも恥ずかしいですが(笑)。 月1回だった掃除を週1回やるようになりました。 ちなみに今は、平日ほぼ毎日掃除しています。
◆掃除とリフォームで黒字化、しかし…
――掃除を自分で始めたのが大きな転機だったんですね 掃除に出会わなければ、今の自分はありません。 自分で掃除をしていると、今まで管理会社に丸投げしていたリフォームにも関わりたくなりました。 管理会社と工事担当者の打ち合わせにも参加するようにしたのです。 あるとき、工事会社から「壁紙はオーナーが選んだほうがいいんじゃないですか?」と提案されたので、自分で壁紙を選びました。 すると、壁紙を気に入ったことが入居の決め手になった客がいた、と管理会社から報告を受けたんです。 そのとき、掃除もリフォームも人任せにせずに自ら取り組めば集客できることを実感しました。 そして、2014年6月、遂に初の満室を達成することができました。 家賃収入も70万円以下からスタートして、80万円になり、90万円になり、初めて3桁を突破したときのことを今でも鮮明に覚えています。 「これは何かの間違いじゃないのか?」と思いました。 支払えずにたまっていた管理会社への“つけ”は最大200万円になっていましたが、2014年8月に完済しました。 そして、9月から経営が完全に黒字化しました。 ――アパート経営が順調にいくようになったのですか? これで経営が軌道に乗って安定した生活ができると思いました。 ところが、わずか3年弱で行き詰りました。 2017年1~3月に3部屋を募集していたところ、1部屋しか決まらなかったのです。 さらに、3月後半に急に転勤による2部屋同時退去が発生しました。 やっとたどり着いた黒字から、再び赤字に転落したのです。
■プロフィール
長田譲氏 有限会社山長 代表取締役 1978年山梨県生まれ。東海大学文学部卒業後、住宅メーカーの営業職や派遣社員などを経験。2007年、祖父の死去に伴いアパート2棟を相続。会社勤めのかたわら、アパートを経営。2015年、母親が継いでいた有限会社山長を承継し、代表取締役就任。