「絶対王者」と同時代ゆえの苦しさ 西田凌佑がバンタム級で生きる道
プロボクシングの国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級王者、西田凌佑(28)=六島=が15日、大阪・HOS住吉スポーツセンターで初防衛戦に臨む。ベルトを保持し続けるための最大の障壁とみられていた、減量を無事に乗り越えた。 【写真】五輪をめざした妻と反対されてもプロボクサーになった夫 描く同じ夢 14日に大阪市内であった前日計量で、上限53・5キロに対し西田は53・3キロだった。対戦するアヌチャイ・ドンスア(28)=タイ=も53・0キロでパスした。 「体重(コントロール)は完璧にやれた。きつさはあったけれど」。王者は特製スープを食べながら、笑顔で語った。 西田は今年5月、当時王者だったエマヌエル・ロドリゲスと対戦。4回にダウンを奪い、3―0の判定勝ちで王座に就いた。 この階級では長身の170センチで、普段の体重は65キロほど。前回は最後の1週間で3キロを絞ったが、トレーニングとの両立に苦労した。 「疲れが抜けにくくて、足もつりそうになって。(最後に)急いで落とした影響はあったと思う」 前回の試合後、陣営は階級を上げる可能性に言及した。だが、結局は見送りになった。 バンタム級の一つ上はスーパーバンタム級(上限体重55・3キロ)。そこには、世界4団体統一王者の井上尚弥が君臨している。 この状況では、当面は、今の階級を主戦場にするしかなかった。 西田は減量苦を少しでも軽くしようと、工夫を重ねた。 よく食べていた豚肉を鳥のささみに置き換え、減量期間に入る前から摂取カロリーを抑えた。 減量開始も少し前倒しして、最後の1週間で2キロを削る計画に。練習量を確保しながら、制限体重内に収めることに成功した。 「早う落とせ、落とせと言うんだけど。でも、経験値が上がってコンディションはよくなっていると思う」とジムの枝川孝会長。 西田も「(新たな減量法を)試してみようという感じだったけど、状態はよかった」と手応えをつかんだようだ。 現在の主要4団体のバンタム級王者は全員が日本人で、難敵ぞろい。この先、王者同士の統一戦に向かうためには、減量に手を焼いてはいられない。 その意味で、減量と強化の両立がかなったのは大きな収穫だろう。 「王者になったからといって別に変化はないけれど、周りの期待は感じる。いい勝ち方をして、より上(のステージ)に行かないといけない」と闘志をたぎらせる。 挑戦者はIBFバンタム級14位。実力を考えれば、絶対に負けられない相手だ。 西田は距離を取って確実に有効打を当てる技術には定評がある。プロ戦績は9戦全勝で、そのうちKO勝ちは一つだけ。典型的なテクニシャンタイプだが、地道な体幹強化の効果で、パンチの威力は増しているという。 「力ずくで倒せるものじゃない。自分のボクシングは崩さず、倒せるように。勝ちたい気持ちでは自分の方が上」と意気込む。(松沢憲司)
朝日新聞社