ホンダも50cc生産終了へ 「原付き」2025年問題、新基準めぐり混乱
「時代の流れ的に仕方ない感じもするが、なくなってしまうのはとても寂しい」。新潟大学のサークル「スーパーカブ倶楽部」で代表を務める、3年生の小野稜介さんはそう話す。 【関連画像】条件を満たせば原付免許で125㏄バイクが運転できる。50㏄原付、新基準のポイント 30人程いる同サークルでは、ホンダのスーパーカブなど“原付き”好きが集まり、週末にはツーリングに出かける。小野さんの愛車は「スーパーカブ50」。1年生の夏には新潟を出発してひたすら南下し、紀伊半島を回る長旅を愛車とともに走りきった。通学や買い物など、移動の足としても毎日使う。「値段も安いし燃費もいい。周囲でも使っている人は多い」と話す。 長年、庶民の足として親しまれてきた、総排気量が50cc以下の「原付一種(原動機付き自転車)」。中でも代表的な「スーパーカブ」シリーズは、世界の累計生産台数が1億台を超え、「世界一売れたバイク」としても知られる。通勤通学から郵便配達、飲食店の出前まで、幅広い用途に使われ、庶民の日常を支えてきた。 しかし、近年では電動アシスト自転車や電動キックボードなどの普及もあって、原付きの出荷台数は激減。2023年における原付一種の出荷台数は9万2824台と、1980年に比べ20分の1の水準にまで落ち込んでいた。 こうした中で二輪大手のホンダは原付一種の生産終了を検討している。またホンダからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けているヤマハ発動機も、ホンダが生産を終了すれば販売を終える公算が大きい。 市場の縮小に加え、メーカーに撤退を迫ったのが、2025年11月から原付一種に適用される新たな排ガス規制だ。ガソリンの不完全燃焼時に排出される有害物質、炭化水素の量を従来基準の3分の1以下にまで減らす必要がある。 炭化水素などの排ガス中の有害物質は、マフラー内部の触媒で除去するが、排気量の少ない原付一種では触媒が効果的に機能する温度に達するまで時間がかかり、新規制への対応が難しい。基準を満たすためには、新たな開発投資が必要となり、現状の市場規模では採算確保が困難な状況になっていた。