コロナ禍 防災農地 注目高まる 3密回避の避難所確保急務
新型コロナ禍の中で災害が起きた際、人が密集しないように避難所の増設が各地で課題となる中、自治体などと協定を結び、災害時に一時避難場所や仮設住宅用地などの役割を果たす防災協力農地への期待が高まっている。JAなどは農家への同意を改めて確認するなど対応を急ぐ。ただ、仮設住宅などが建設されれば長期に営農ができなくなる懸念もあり、課題も横たわる。
農家 「協力したい」が…長期利用で営農に不安 東京都足立区
人口約69万人を抱える東京都足立区。小松菜を栽培する江川浩さん(43)は、所有する畑41アール全てが防災協力農地だ。1棟約2アールのビニールハウスが7棟あり、災害時は資材置き場にしたりハウスを開放したりすることを考える。江川さんは畑の他、電動でくみ上げる井戸を2基所有する。水質検査をしていないため飲料にはできないが、生活用水としてなら使用できる。コロナ禍で同区は避難所の確保が課題となっており、江川さんは「人命が一番だから、できることは協力したい」と考えている。 ただ、悩みもある。学校給食用に小松菜を出荷しているためハウスが空く時期はなく、避難所として使うことになれば、栽培中の小松菜を廃棄することになる。江川さんは「農業で生計を立てているので長期に農地を防災として使うとなると、どうしたらいいのか」と頭を悩ませる。 同区は、避難所で1人当たりに必要な面積を、1・65平方メートルから4平方メートルに変更。公共施設に30万人は収容できる試算だったが「1人当たりの面積を広げたことで、収容できるのは6万人と、5分の1しか入れない計算になってしまった」(危機管理部)。そこで、最終的な手段として視野に入れるのが防災協力農地の活用だ。 同区がJA東京スマイルを通じて農家と協定を結んだのは2007年。JAは現在、同区の他、葛飾区、江戸川区と協定を結び、348戸の農家から災害時協力の同意を得ている。しかしそれぞれ協定を結んだ年から年数がたっており、後継者の同意が取れていない場合や離農などで農地がない恐れもあるとみる。江川さんも「協定に同意したか記憶が曖昧で、防災協力農地になっていることを忘れていた」と話す。JA営農指導課の黒川保隆主任は「地域に根差して農業を営んできた農家は、共助の精神で地域の防災に協力してくれている」と評価するとともに、「今後、協力農家と農地について話し合い、定期的に組織の会議などで防災協力農地について説明するなど喚起に努めたい」と話す。