『はたらく細胞』の3週連続Vで2024年はフィナーレ!年末年始興行も日本の実写映画が大奮闘
2024年最後の週末となった12月27日から12月29日までの全国映画動員ランキングが発表。ここまで2週連続で首位をキープしている『はたらく細胞』(公開中)が、今週も危なげなくV3を達成。また、1位から8位までの顔ぶれに変化はなく、6位までは順位も前週と変わらない結果となった。 【写真を見る】北米で大金星をあげた『ソニック』が日本凱旋!今度の舞台は東京、人気キャラのシャドウが立ちはだかる ■日本の実写映画が上昇傾向の一方、洋画実写がかつてない苦境に 3週連続でNo. 1を飾った『はたらく細胞』は週末3日間で観客動員42万7000人、興行収入5億8100万円と、前週対比110%の成績を記録。累計成績では動員202万人&興収27億円を突破。子どもから大人まで幅広い世代が一緒になって楽しめる明るい作品が求められる年末年始にぴったりの同作は、しばらくこの勢いを保ち続けることだろう。 一方で公開4週目を迎え、3週連続2位をキープした『モアナと伝説の海2』(公開中)も、週末3日間で動員33万2000人、興収4億3300万円と前週対比およそ120%の上昇カーブを描く絶好調ぶり。こちらは累計成績動員237万人&興収31億円を突破。また、前週に引き続き3位の『ライオン・キング:ムファサ』(公開中)も、週末3日間で動員18万7000人、興収2億6800万円を記録。累計成績では動員62万人を超え、興収は9億円に迫っているようだ。 この上位3作品と、熱いファンダムの後押しもあって4位を守り抜いた『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』(公開中)、シニア層からの支持も厚い『劇場版ドクターX』(公開中)の5作品に加え、2019年に放送された木村拓哉主演ドラマの劇場版となる『グランメゾン・パリ』(公開中)が年末ギリギリの12月30日に公開。ここ数年のように“一強”の国内アニメがいない今年の年末年始戦線は、例年にも増して大激戦となりそうだ。 しかもそのうち半数が日本の実写映画というのは興味深いポイント。先日行われた「2025年東宝配給作品ラインナップ発表会見」において、2024年が「日本の実写映画の可能性を感じた年」と語られたように、今年はすでに興収50億円超えの日本の実写映画が3本。これは2012年以来のことで、ここにもし『はたらく細胞』が加われば2006年以来の多さとなる。それらとは対照的に、洋画の実写映画はこれまでにないほどの苦境を強いられているようだ。 2024年公開作では『デッドプール&ウルヴァリン』(24)がかろうじて興収20億円を超えただけで、それ以上のビッグヒットは生まれず。興収30億円超えのタイトルがないのは2000年以降で初めて。その背景には、ストライキの影響でそもそもビッグタイトルが少々不足気味であったこと、公開されたビッグタイトルも日本で大きく流行るタイプのものではなかったことなど、いくつかの理由が考えられる。 かつてのように北米の公開から日本公開まで何ヶ月も開くような状況が改善されつつある(しかも先述の『デッドプール&ウルヴァリン』は日本のほうが公開が早かった)一方で、その分ライト層への作品の浸透力は低下しており、劇場公開が見送られる作品も増え、挙句に興行的に満足のいく数字を上げられないとなれば、ますますこの“邦高洋低”の状況は続いてしまうだろう。その点で一長一短という現状。日本の実写映画が勢いを取り戻したいまこそ、実写洋画を取り巻く状況にも抜本的な改革が求められるところだ。 ■『ソニック x シャドウ』『勝ち切る覚悟』が初登場 前ページで触れた話にも通じるのは、9位に初登場を果たした『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(公開中)。日本のセガが生みだした人気ゲームを、ハリウッドで実写とCGアニメーションのハイブリッドとして映画化した「ソニック・ザ・ムービー」シリーズの第3弾だ。 2020年に公開された第1作、2022年に公開された第2作いずれも北米ではスマッシュヒット(第1作の場合は公開中にパンデミックに見舞われてしまったが)となり、ゲーム原作映画の興収新記録を樹立。この第3作も北米興収ランキングで『ライオン・キング:ムファサ』を上回る大金星で1位スタートを飾り、さらなる記録更新が期待されている。 しかし日本では、前2作とも興収2億円を下回っており、北米から1週間遅れで公開された今回も9位からのスタートに。日本で生まれたキャラクターであり、今回の舞台はタイトルからも分かる通り東京。新たに登場するゲーム版の人気キャラクター“シャドウ”の声をキアヌ・リーヴスが担当するなど日本の映画ファンにも届きそうな話題がたくさんあるだけに、もっと注目されてもよさそうなものだが…。 もう一本の初登場タイトルは、10位にランクインした『勝ち切る覚悟 ~日本一までの79日~』(公開中)。今年26年ぶりの日本一に輝いたプロ野球・横浜DeNAベイスターズの球団公式ドキュメンタリーで、“勝ち切る覚悟”のスローガンを抱えて団結していったチームが、日本一を掴み取るまでの79日間に密着した内容となっている。 ベイスターズの球団公式ドキュメンタリーはこれが9作目。初期の頃は神奈川県内の一部の劇場での上映だったものが、徐々に全国へと拡大。なかでも球団初のクライマックスシリーズ進出を果たした2016年シーズンの舞台裏を描いた『FOR REAL-ベイスターズ、クライマックスへの真実。-』(17)は反響が大きく、当時横浜の映画館で働いていた筆者も上映期間中の盛り上がりぶりを鮮明に覚えている。 今回の作品は全国で36館という前作よりも倍近い規模での上映で、シリーズ初のトップ10入り。もちろんトップ10圏内の他の作品の上映規模と比較すると圧倒的に少ない上映館数だ。1館あたりの詳しい動員成績は発表されていないが、特に神奈川県内15館はいずれも大盛況となっていることだろう。 以下は、1~10位までのランキング(12月27日~12月29日) 1位『はたらく細胞』 2位『モアナと伝説の海2』 3位『ライオン・キング:ムファサ』 4位『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』 5位『劇場版ドクターX』 6位『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』 7位『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』 8位『【推しの子】-The Final Act-』 9位『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』 10位『勝ち切る覚悟 ~日本一までの79日~』 2025年最初の週末となる今週末は、ジェイソン・ステイサム主演最新作『ビーキーパー』(2025年1月3日公開)などが控えている。また、『グランメゾン・パリ』(公開中)も上位にランクインしていくることが予想される。 文/久保田 和馬