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酒税非課税になった「アルコール消毒酒」、官民で「転売ヤー」包囲網 メルカリも本腰

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税理士ドットコム

新型コロナウイルスの感染拡大で、アルコール消毒液が不足する中、国税庁は5月1日、期間限定で高濃度エタノール製品に酒税を課さないと発表しました。製造する酒造メーカーや、消費者の声に応えた形で、「医療機関や高齢者施設などに広く行き渡るようにしたい」(国税庁酒税課)との狙いです。一方で、酒税を課さないことで、高額転売を繰り返す事業者や個人に対して酒税法違反を適用できなくなるリスクもありますが、メルカリのようなプラットフォーマーも対策に本腰を入れ、官民による「転売ヤー」包囲網が形成されつつあります。(ライター・国分瑠衣子) ●酒造会社、非課税に安堵「訴えていたことが、実現した」 国税庁が高濃度エタノール製品に酒税を課さない方針を固めた5月1日、富山県砺波市の若鶴酒造の5代目、稲垣貴彦取締役は「訴えていたことが実現しました」とほっとした様子で話しました。 若鶴酒造では4月から「砺波野スピリット77」を製造しています。5月1日までで医療機関などに出荷した数は12,000本。稲垣取締役は「全国の医療機関から問い合わせが殺到していて、休み返上で製造している状況です」と説明します。 砺波野スピリット77は消防法で危険物に該当し、一日に作れる量が決まっているため、生産できる量は一日1300本ほどで供給が追い付いていません。また、遠方への輸送は時間がかかるため、同社では高濃度エタノール製品を製造している各地の酒造を紹介するマップも作成し、ホームページで紹介しています。 砺波野スピリット77はリキュールに分類され、価格は300mlで880円(消費税別)。このうち酒税231円が含まれています。稲垣取締役は4月15日、同社のホームページ上で、「高濃度エタノール製造のため、いま必要なこと」と題し、酒税法や消防法の規制緩和を提言しました。酒税についても「特に飲用目的ではない医療機関向けのものについては、酒税がかからないようにできないか」と訴えました。 ●80度のスピリッツ500mlの場合、酒税400円が課されなくなる 国税庁の発表では、消毒用として製造した「お酒」は5月1日以降の出荷分から、一定の要件を満たした場合に限り、酒税法上「不可飲処置」が施されたと承認され、酒税が課されなくなります。製品のラベルには「飲用不可」と表示しなければなりません。この特例により、アルコール度数が80度のスピリッツ500mlの場合、酒税400円が課されなくなります。 そもそも酒税はどのようにして決まるのでしょうか。日本の酒税は、お酒の種類に応じて税率を変える制度を採用しています。原料や製造方法などで異なり、ビールやチューハイなどの「発泡性酒類」、日本酒やワインの「醸造酒類」、焼酎やスピリッツやウイスキー、ブランデーの「蒸留酒類」、合成清酒やみりんなどの「混成酒類」の4つに分けて基本の税率を定めています。このうち、高濃度エタノール製品に多い「蒸留酒類」はアルコール度数に応じて税率が高くなる「度数課税」になっているのです。 蒸留酒類のうち、ウイスキー、ブランデー、スピリッツの酒税は1kl(1000l)当たり、アルコール度数が38度未満なら37万円で、38度以上は1度高くなるごとに1万円が加算されます。例えば茨城県の木内酒造が製造する「NEW POT70」は、300mlで消費税込み価格が1210円です。ウイスキーに分類され、210円の酒税がかかっています。 ●国税庁の転売対策:ラベルに管理番号をつけ、出荷先を管理 特例により酒税が課されなくなることで、一つのリスクが生まれます。酒税が課されなくなる=お酒ではない、ということなのでお酒の販売免許を持たず、高額転売を繰り返した事業者や個人に対し、酒税法違反を問えなくなってしまうという点です。 このリスクを抑えるために、国税庁酒税課は対策を講じました。承認申請する酒造メーカーに対し、「要件」を設けたのです。 要件は①医療機関などから提供要請があった場合は、必要性の高い施設などに優先的に提供する②出荷先に対して、決して飲用しないことや、詰め替えや表示の書き換えで酒類として転売しないことを遵守を徹底させることなどを盛り込みました。 さらに、製品にはるラベルに管理番号を載せ、出荷先ごとに枝番号をつけることで、販売先を管理します。酒税課の担当者は「あくまでも高濃度エタノール製品を本当に必要としている医療機関や高齢者施設などにいきわたるように、今回の特例を設けました」と強調します。 ●メルカリ、5月2日から医療機関で必要とされる商品の出品を禁止 高濃度エタノールを高値で転売する動きを止めようと、プラットフォーマーも規制に本腰を入れ始めました。フリマアプリ運営会社のメルカリは、5月2日から当面の間、高濃度エタノールや除菌シートやスプレー、フェイスシールドなど医療機関で必要とされる商品の出品を禁止しました。 同社は「通常の経済的価値と著しく乖離(かいり)した価格で出品することは、医療機関に影響を及ぼす恐れがあるため」と説明しています。メルカリでは、希望小売価格が1200円の高濃度エタノールを4000円や8000円の高値で販売するケースが相次いでいて、SNS上などで問題視されていました。国税庁もプラットフォーム事業者に高濃度エタノールの販売について適切に対処するように要望してきました。 ただ、5月2日現在、アマゾンでは菊水酒造の「アルコール77」が、6300円と希望小売価格の5倍近い価格で販売されているなど、まだ高額の販売は続いています。 酒造メーカーの善意で始まった、高濃度エタノール製品ですが「安く仕入れて、高く売るのは生活の知恵」という転売ヤーの声もあります。若鶴酒造の稲垣取締役は「転売を罰則付きで禁止にしてほしい。本当に必要としている方の手元に届かなくなる上に、行列によるトラブル発生など地域の迷惑にもなります。安定した供給のためには、民間や行政といった枠や、規制のハードルを越えたワンチームの取り組みが日本を救うと信じています」と話しています。

弁護士ドットコムニュース編集部

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