絵本から飛び出たようなファンタジー空間へ。|アーティストの別荘訪問(2)
フランスの暮らしに根付く"暮らしの美学"、アール・ドゥ・ヴィーヴル。その精神を体現するアーティストの別荘を訪問。イラストレーター、デザイナーのマラン・モンタギュが週末を過ごす田舎の家は、まるで絵本から飛び出たようなファンタジーにあふれている。
おとぎ話の世界を描く、自ら作り上げた"幸せの家"。
今年4月に日本初上陸を果たしたライフスタイルブランド、マラン・モンタギュ。食器や文房具、キャンドル、クッション、スカーフなどを繊細なイラストで彩り、そのモチーフはバラ、レモン、四つ葉のクローバー、エッフェル塔、リュクサンブール庭園の椅子、メトロの入口、市内の標識などなど。それらを描き、クリエイトするマラン・モンタギュが週末を過ごすのは、ノルマンディ地方ウール県にある田舎の家だ。まるで絵本から飛び出たように、緑の中にひっそりと立っている。 パリにいる時の彼はベスパを愛用し、12区にある自宅と6区のマダム通り48番地にある店舗、10名ほどのチームが働く20区の小さな製作所の間を行き来している。パリ愛が高じて『Bonjour Paris(ボンジュール・パリ)』というガイド本を自費出版したのをきっかけに、世に知られるようになった。 「週末はなるべくここで過ごすようにしています。大きなプロジェクトを抱えている時は2週間ぐらいこもってじっくりアイデアを練ることもあります。庭の門を閉めればもう完全に自分の世界です。この家でまず着手したのは、1階の大きな窓がある古い寝室をアトリエに改造することでした。壁も天井もまるごと緑に塗りました。真っ白なアトリエが好きなアーティストもいますが、私には落ち着かなくて」
Atelier
自分のもので囲まれていないと安心できないからと、仮面にフィギュア、水彩画、花瓶、ガラスドームを被せたオブジェ、旅の思い出、ちょっとしたお宝グッズなどがきちんと配置されている。机の上も同様に整理されている。新作のマルセイユ・タロットの絵もここで描いた。タロットカードには子どもの頃から思い入れがあるそうだ。 「芸術家だった祖母は、よくタロット占いをしてくれました。絵を満載した車でやってきて荷物を下ろすと、まず占うのがいつものパターン。母も占いができました。やがて家族以外の人にも占ってもらうようになり、タロットカードを作りたいと思うようになりました。占い自体はさておき、タロットの世界は日常から離れられるのがいいのです。作りたかったのは、たとえ遊び方を知らなくてもただ美しいというだけで買う気を起こさせるカード。ここで2年かけて完成させました。少しでも時間があるとカードを描いていましたね。どのイラストも自分で描き、それをスタッフがスキャンしてさまざまな製品に展開しています」